<地域資源の活用>
藍由来アトピー性皮膚炎治療薬
◎ 藍は津軽(弘前を中心とした青森県西部)と歴史的につながりの深い植物です。
弘前市
慶安年間(1648年〜)には弘前市紺屋町に100軒ほどの紺屋(天然藍染工場)がありました。
しかしドイツにおける藍色色素(Indigo)の化学合成と工業合成の成功によって世界的に安価な
藍色色素が流布し,他と同様に衰退して行きました。
現在,弘前市内では天然藍染工場は,川崎染工場(亀甲町),川口染工場(北川端町)など極く
限られたところだけになっており,僅かに「こぎん刺し」に面影を残すだけです。
藤崎町・板柳町
幕藩体制が崩壊し士族は職を失いました。
そこで明治政府は三大政策の一つである士族授産の下,全国に種々の農業や工業の種となるもの
を配付しました。弘前藩に配付されたものの一つが藍でした。
旧弘前藩士らは下袋地区(岩木川と平川の合流地点)で藍の栽培を行い,「すくも」製造も行っ
てました。
しかしインド産の安価な藍の輸入と生産性の高いリンゴ栽培への代替によって衰退し,現在,
自家栽培が行われているだけで,「すくも」製造技術は絶滅の状態にあります。
◎ 天然藍染工業の復興=自然回帰の風潮
健康食品など様々な分野で自然回帰の取組みが行われています。
現代工業における藍染はインジゴによるものですが,天然藍染ではインジゴだけでなく赤・青・
紫・黄色など様々な色素が含まれるために複雑な色調を織りなし,その美しさから人々に愛されて
きました。
これらのことから津軽でも天然藍染工業の復興の動きがあります。
◎ 天然物有機化学からみた藍
藍は古来から藍染めの原料の縮物,あるいは民間伝承薬として利用されてきました。しかし一般
に良く知られた植物の割に,種々の薬理効果について化学的な証拠は極めて少ないものでした。
◎ アトピー性皮膚炎治療薬=藍
文献と聞取調査(川崎染工場や宮城県栗駒町・正藍染千葉家)によって,藍は「肌に良い」こと
が分かりました。そこで皮膚炎症との関わりに注目しました。
皮膚炎には菌が大きくかかわってます。そこで文献など詳細に探索し,Malassezia furfur菌に
着目しました。M. furfur菌は澱風・脂漏性皮膚炎などの原因菌として知られていましたが,つい最近
この菌から9つのアレルゲンが見出され,アトピー性皮膚炎との関連から皮膚科学者から注目されて
います。現在,最も対策が望まれているのはアトピー性皮膚炎(先進工業国の人口の20%が患って
いる)です。
◎「研究テーマ」
これらのことから「M. furfur 菌に対する抗菌活性を指標としたアトピー性皮膚炎治療薬の開発研究」
と設定しました。
◎ 抗菌性物質からアトピー性皮膚炎治療薬へ
タデ藍(Polygonum tinctorium)は本学部・肥田野豊先生(技術科教育講座)のご協力の下,本学部
附属千年農場で栽培しました。またM. furfur菌に対する抗菌活性試験は福井徹先生(病体生理研究所)
にお願いしました。
タデ藍の乾燥葉からの抽出・分離・分画とその活性試験の繰返しによって,MIC:3.9μg/mlの高活性
物質を単離し,その化学構造をTryptanthrinと同定しました。
いよいよTryptanthrinのアトピー性皮膚炎治療効果です。
本学医学部皮膚科学教室・花田勝美教授のご指導の下,本学倫理委員会の厳しい審査を経て承認さ
れ,本学医学部皮膚科学講座で臨床試験が行われました。
その結果,明らかな治癒効果が見られました。
これらの成果は,昨年末に東北テクノアーチ(東北大学TLO)から特許申請されました。
現在,本学医学部細菌学講座・中根明夫教授のご指導の下,共同研究が始まってます。
また新たな物質を求めて研究を継続してます。
◎ 学会・社会の反響
学 会
日本薬学会 第124年会において,総講演数 3,700件から講演ハイライト(150件選抜)に選ばれま
した。
特 許
東北テクノアーチ(東北大学TLO)から特許申請
「藍由来アトピー性皮膚炎治療薬」 (平成15年11月)
新 聞
東奥日報・朝刊に取り上げられました(平成16年4月24日付け)。