体験的活動を重視した社会科学習

     ーー「6年 歴史をつたえるもの」「5年 伝統工業」を中心にーー

                        所属:弘前大学教育学部附属小学校
                        氏名:天 内  純 一

              要  約

 体験的な活動を組み入れた社会科学習について,具体的な単元構成をもとに述べた。
「6年 歴史をつたえるもの」の単元では,見学・調査,製作などいろいろな活動を組
み入れたが特に縄文土器づくりを中心に,また,「5年 伝統工業」の単元では水彩絵
の具を使った津軽塗もどきづくりを中心に,子どもが主体的に学ぶ学習過程について述
べた。 教科・領域の学習を総合的に進めるという点も重視し,他教科や特活との関連
を図った指導計画を工夫してみた。
 [キーワード]小学校,社会科,体験,土器づくり,津軽塗,他教科・特活との関連

[1].はじめに
 体験的な学習活動を組み入れることによって,子どもの学習意欲が高められ,主体的
な問題追究がなされ,学習に深まりがみられるようになると考えられる。
 文部省社会科指導資料1 によれば,体験的な学習活動の役割は,次の三点に整理され
る。
(1)子ども中心の学習に変えることができる 
(2)地域社会に根ざした社会科の学習を展開していくことができる 
(3)社会科の学習を楽しいものにすることができる
 これらの利点を意識し,体験的な活動を組み入れた教材開発や学習過程の研究に取り
組み,実践を重ねていくことが大切であると考えている。
 本稿では,体験的活動を組み入れた学習として,主として2つの具体的な単元をもと
に述べる。
 6年生の「歴史をつたえるもの」
・地域の史跡調べ
・土器づくり
・遺跡発掘現場の見学
・模倣発掘など
 5年生「伝統工業」
・地域の重要な伝統工芸品である津軽塗の「モドキ」づくり
・津軽塗の工場見学など
 これらの体験的な学習活動を単元の中にどのように位置付け単元構成していけばよい
か,さらに他教科・領域との関連をどのようにすべきであるかという点についても工夫
してみた。
 ところで,文部省指導資料2 に,体験的な活動を組み入れた場合の課題として,概略
して次の5点が指摘されている。
(1)体験的活動の,社会科としてのねらいを明確にもつこと
(2)体験的活動による発見を学級全体で確認し合うこと
(3)問題解決の活動に位置付けること
(4)子ども一人一人のよさが発揮できるようにすること
(5)年間指導計画の作成
(6)教育課程全体を視野にいれ,他教科等および他学年との関連をはかること
 単元構成にあたって,それらの課題を解消出来るよう工夫をした。 
 なお,本稿で対象とした子どもたちは平成5年度の附属小学校5年生,平成6年度の
附属小学校6年生である。

[2].研究の目的
 子どもの学習意欲を高めるために教材開発に取り組むとともに,体験的活動の組み入
れ方を工夫し,問題解決の活動に位置付けた単元構成のあり方を,具体的な単元をもと
に探る。

[3].研究方法
1.体験的活動を取り入れた,地域教材の開発をする。
2.これまでに実践した,「5年津軽塗もどきづくりを取り入れた伝統工業」の単元構
成に考察を加え,より改善された指導計画を立てる。
3.これまでに実践した,「歴史学習のオリエンテーション」の単元について,さらに
体験的な活動を増やし,他教科・特活との関連を図りながらった総合的な指導計画を立
てる。

[4].研究の実際
1.「歴史をつたえるもの」の単元について

(1) 製作活動として,土器づくりを組み入れた授業の課題
 子どもは土器の製作に関心を持ち意欲的に取り組む。粘土をこね,土器の底をつくり
,失敗を繰り返しながらも「立ち上げ」に挑戦する。縄文土器への模様つけでは,資料
を調べて縄文土器特有の模様を工夫したりする。「世界でただ一つの自分だけの土器を
つくろう」ということを目標にするとさらに意気込みが違ってくる。
 しかし,土器をつくるという活動が社会科学習で有効であるかという点については問
題点も指摘されてきた。授業者が社会科としてのねらいを明確に持てず,学習が単発的
に終わってしまうことが多かったのである。また,土器づくりや完成した土器をつかっ
た活動を幾つか取り入れた場合,それだけで多大の時間を費やしてしまい,他の単元の
指導などが不十分なものになってしまうのである。
 そこで,土器づくりを「歴史学習のオリエンテーション」の単元の中に位置付けて単
元構成することを考えた。ねらいを「身近な地域に残っている遺跡や文化財を調べたり
,土器づくりや模倣発掘をすることによって,自分たちの生活の歴史的背景に関心をも
つとともに,歴史を学ぶ意味について考える。」ということにした。
 また,社会科・図工・特別活動等との関連を図ることを重視した。
 土器の製作については主として図工の時間で行い,社会科・特活では史跡調べや縄文
遺跡発掘現場の見学をする。これらの活動を合わせて(合科のような形で)大単元を構
成し,「地域の歴史を見なおそう」ということにしてみた。時間数は11時間をあて広
い学習過程を考えてみた。
 土器づくりは,この11時間の中に位置付けることによって製作のねらいが明確にな
る。
・社会科の時間────4時間
学校付近の史跡を調べ,歴史学習に関心を持つとともに,弘前市や県内外の史跡や文
化財を調べる計画を立てる。
・図工の時間─────5時間
 縄文土器づくり
・特別活動(一日行事)───三内丸山遺跡見学
・社会科の時間─────2時間
 模倣発掘

(2) 単元構成にあたって
 体験的活動として組み入れたのは,貴船神社の見学・調査,弘前市の史跡調べ,縄文
土器づくり,三内丸山遺跡の見学などである。模倣発掘については実践の後に改良を加
え追加したものである。
 単元を大きく三つに分け,第一次・第三次の後半を社会科の時間とした。

(3) 指導計画(11時間 ) 一次(4時間) 二次(1日5時間) 三次(2時間)
┌─┬─────────────┬─────────────┬───────┐
│次│   子どもの学習活動   │  教師の支援や留意点  │評価の視点  │
├─┼─────────────┼─────────────┼───────┤
│ │1)弘前市の遺跡や文化財につ│・代表的な文化財などの例を│・弘前市の遺跡│
│ │ いて話し合う      │ 示しながら、広く考えられ│ や文化財に気│
│ │             │ るようにする。     │ 付いたか  │
│ │2)学校の近くにある「貴船神│・案内板や石碑の見方などを│       │
│第│ 社」を見学する。    │ 指導することによって、調│       │
│ │             │ 査方法を身に付けさせ、幅│・興味、関心を│
│ │             │ 広い見方・考え方ができる│ もって観察・│
│一│3)県内や全国の貴船神社につ│ ようにする。      │ 調査している│
│ │ いて調べ、関連する事柄を│・貴船神社要誌や市の観光パ│ か     │
│次│ 等尺割年表にまとめる。弘│ ンフレットなどをもとに年│・資料を効果的│
│ │ 前市の遺跡や文化財につい│ 表づくりに意欲的に取り組│ に活用してい│
│ │ ても付け足してまとめる。│ むようにする。     │ るか    │
│ │4)休日などを利用して、遺跡│・マップづくりや文化財巡り│・意欲的に計画│
│ │ や文化財について調べる計│ コースづくりに関心をもた│ を立てている│
│ │ 画を立てる。      │ せる。         │ か     │
├─┼─────────────┼─────────────┼───────┤
│第│1)縄文土器づくりをする。 │・三内丸山遺跡の見学が学年│       │
│ │・三内丸山遺跡について調べ│ 行事になっているので、見│       │
│二│ 縄文時代に関心をもつとと│ 学の事前指導を兼ねて行な│       │
│ │ もに、土器づくりの計画を│ い、関心を高める。   │       │
│次│ 立てる。        │             │・土器づくりに│
│ │・(図工の時間に土器づくり│・発掘された土器の破片から│ 意欲をもって│
│ │ をする。)       │ 復元した土器に実際にさわ│ 取り組んだか│
│ │・野焼きをする。 (別記)│ らせ、意欲を高める。  │       │
├─┼─────────────┼─────────────┼───────┤
│第│(三内丸山遺跡の見学)  │             │       │
│三│             │・遺跡見学の後、発掘のよう│・模倣発掘に意│
│次│1)模倣発掘をする。(別記)│ な活動が実際に出来ないか│欲をもって取り│
│ │             │ 考えさせ意欲を高める。 │組んだか   │
└─┴─────────────┴─────────────┴───────┘

         貴船神社(弘前市取上)境内を調査する子どもたち

               土器づくりに取り組む

               土器づくりに取り組む

            学校の中庭で野焼きする子どもたち
 (4) 土器づくりの手順は次のようになっている。
  (1)土器の形をつくる。
   o市販されている「野焼き用粘土」を使用する。
   oよく練った後,つなぎ目に気をつけながら底の方からつくっていく。
   o縄やへら(定規など自由に工夫する)で模様をつける。
  (2)1〜2週間陰干し。
   使われていないプールの更衣室を利用した。
  (3)野焼き
   o地面を焼く
    ・直径2〜4mぐらいの円形に,木や燃えるものを置く。
    ・地面から蒸発した水蒸気が土器に湿り気を与えることを防ぐため,板の上に
     土器をのせて,中央の火を囲むように,円形に土器を並べる。
    ・木に火をつける。
  (4)あぶり
   o(3)と平行して行なう。側面→底→側面・・・と,まんべなく焼く。
      (1〜2時間)
   o土器の温度が上がってくるので,軍手などを使用する。
   o時間が経ったら,次第に火に近付けてあぶる。
  (5)中央にまとめて,外側から焼く。
   o土器を中央にまとめてしまうと,中に入れなくなるので通路をつくっておく。
  (6)攻め焼き 
   o全体に木をかぶせて焼く。
   oわらなどもかぶせてみる。
  ※準備物その他の留意点については略

(5) 考察
(1) 学校の近くにある貴船神社の見学によって、歴史を身近なところから始めようと
いうねらいは達成されている。子どもたちにとっては、「宵宮」など以外にはほとんど
馴染みのない場所であるが、細かく観察・調査してみると、案内板に意外なことが書か
れていたり、境内に歴史上重要な石碑が立てられたりしている。米づくりには欠かせな
い水の不足に苦しみ、水を手に入れるために、祖先が遠い京都から貴船神社を勧請した
らしいことに、子どもは気付いていく。
 なお,貴船神社に関する資料や年表づくり,見学の留意点や子どもの感想については
,拙著に詳しく述べてあるので参照して戴きたい。7
(2) 歴史年表づくりによって子どもに歴史の全体像が見えはじめる。同時に、江戸時
代を中心に遺跡・文化財が数多く残されている弘前市を「歴史探険」しようという意欲
が出てきた。
(3) 土器づくりについて
o土器づくりに入る前に縄文時代についての学習をした。郷土史家の市川金丸氏から,
三内丸山遺跡や縄文時代の人々のくらしについて,興味深いお話をたくさん聴くことが
でき,子どもたちの関心が高まった。
o土器をつくる時は,一日で一気に作り上げてあげてしまわないと,乾燥してしまう。
丁寧につくる子が多く,3時間ほどかけたがうまく出来ずに放課後も頑張る子がいた。
o土器の野焼きに使う燃料の薪などが父母の協力でたくさん集まった。
野焼きには5時間ほどかかったが,5時間全部を火の近くで世話をする必要はない。時
間を有効に使うために他の授業と平行して行なうようにした。一番はじめの「あぶり」
の段階では,ほとんど全員が活動したが,次の段階からは,グループごとに交代で焼い
た。焼いていない子は,中庭の近くの教室で国語・算数などの一人勉強を続けていた。
野焼きの場合,色が大きく変化する様子などを観察する他はできるだけゆっくり時間を
かけて焼き,割れることを防ぐ必要がある。
 次に野焼きをした子の感想を載せる。

o三内丸山遺跡についての学習を導入として,土器づくりをし,実際に発掘現場を見学
するという一連の学習過程は子どもの意欲・関心を高め効果的であった。

(4) 模倣発掘について
 発掘を体験することの意義は大きい。発掘によって歴史に対する興味が沸き,自主的
・自発的な学習が促されることになる。また、生涯学習という面からも有意義な活動で
あると考えられる。しかし,発掘現場に小学生が立ち入って,実際に発掘作業に参加で
きるという機会は少ない。そこで,次のような「模倣発掘」をさせ,学習の深まりを目
指すことを考えてみた。
o前年度の6年生が制作した土器を譲り受ける(失敗した破片を含む)。
o雪が溶けた頃を見計らって,雑草が生える前の地面に穴を掘り、土器や破片を埋める
(発掘にあまり時間がかからない程度に浅く)。
o雑草が地面を覆ってしまう6月頃を目安にして,模擬発掘をする。雑草が土器の埋ま
っている辺りを覆っているので実際の発掘現場に酷似している。
o教育学部社会科専攻の学生の協力を得て,発掘の手ほどきを受けながら、学級のみん
なで,模倣発掘をする。

2.「津軽塗もどき」づくりを取り入れた伝統工業の学習
(1) これまでの伝統工業の学習
 伝統工業の学習に「津軽塗」を取り上げる試みは,これまでも数多く行なわれてきた
。実践例も多い。
 地域教材である津軽塗の学習を通して,子どもが自分とのかかわりを大事にしながら
学習活動を主体的につくっていくことができるようになるからである。また,津軽塗の
美しさや製作工程をより実感的に捉えさせるために,水彩絵の具を使って「津軽塗もど
き」を製作するという学習活動も行なわれてきた。
 これまでの取り組みについての課題としては,1.はじめにの項で述べた体験的な活
動を組入れた社会科学習の課題の(3)(5)(6)があげられる。
 すなわち,問題解決的な学習過程への組み入れ方の工夫が足りないこと,年間指導計
画への位置付けをはっきりしていないこと,他教科等との関連がないることなどである
。これらの課題に取り組みながら,「津軽塗もどき」づくりを組み入れた指導計画を考
えてみた。

(2) 指導計画(11時間 )
・社会科の時間ーー8時間
・図工の時間 ーー4時間
津軽塗もどきづくり
・特別活動(半日行事)
 津軽塗団地にある工場を見学する。
(3) 単元の構成
 問題解決的な学習過程へ組み入れるため,導入段階で大量生産が可能な疑似津軽塗製
品と本物の津軽塗製品を比較する活動を取り入れた。そして,津軽塗の美しさに迫ろう
という目標のもとに津軽塗もどきづくりに取り組ませてみた。以下「津軽塗の美しさと
深みの秘密」を追究する過程を通して,伝統工業で働く人々の苦労や工夫,津軽塗の歴
史,問題点などについての学習が進められるように単元構成してみた。
 また,年間指導計画の中に特別活動としての社会科見学を位置付けることによって系
統的,発展的な学習が展開できるようにした。

┌─┐    ┌─────────────────────────┐
│ │    │・家にある「津軽塗」の製品を持ち寄る。      │
│つ│    │・大量生産されている「津軽塗の模様をプリントした」│
│ │    │ お盆と本物の津軽塗りのお盆を比べて,気が付いたこ│
│ │    │ とを話し合う。                 │
│か│    └─────────────┬───────────┘
│ │    ┏━━━━━━━━━━━━━┷━━━━━━━━━━━┓
│む│    ┃津軽塗がとても美しく,深みのある秘密を探ろう   ┃
└─┘    ┗━━━━━━━━━━━━━┯━━━━━━━━━━━┛
       ┌─────────────┴───────────┐
       │・津軽塗の工程を調べ,津軽塗りモドキを制作してみる│
┌─┐    │・津軽塗モドキと本物の津軽塗りを比べて気が付いたこ│
│追│    │ とを話し合う。                 │
│ │    └─────────────┬───────────┘
│ │    ┌─────────────┴───────────┐
│究│    │津軽塗がつくられているところを見学し,津軽塗りの美│
│ │    │しく深みのある秘密を探る。            │
│ │    └─────────────┬───────────┘
│す│     ┌────────┬───┴────┬────────┐
│ │ ┌───┴───┐┌───┴───┐┌───┴───┐┌───┴─┐
│ │ │津軽塗の製作 ││津軽塗の種類や││津軽塗の歴史 ││問題点やな│
│る│ │       ││特徴,材料など││       ││やみ   │
│ │ └───┬───┘└───┬───┘└───┬───┘└───┬─┘
└─┘     └────────┴───┬────┴────────┘
┌─┐    ┏━━━━━━━━━━━━━┷━━━━━━━━━━━┓
│ま│    ┃津軽塗が美しく深みのあるわけを中心に,学習したこと┃
│と│    ┃をまとめる。                   ┃
│め│    ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
│る│    ┌─────────────────────────┐
└─┘    │・全国各地の伝統工業について調べる。       │
       │・学級みんなの家にある伝統工芸品を持ち寄り,伝統工│
       │ 芸品の展示会を開く。              │
       └─────────────────────────┘

 (4) 津軽塗りモドキの製作について(唐塗) 
   以下に述べるのは,本校(弘前大附小)の図工部が以前に開発した方法である。

  o材料 ・水彩絵の具(図工で使用しているもの)
      ・縦10cm×横10cm以上 厚さ5mm前後の板
      ・紙やすり(目の粗いもの 細かいもの)
      ・サラダ油

  o津軽塗の工程と津軽塗モドキ
    ・津軽塗────────下地作り⇒模様つけ⇒塗り⇒仕上げ
    ・津軽塗モドキ─────地塗り ⇒模様つけ ⇒仕上げ 

  o津軽塗モドキの製作(好みによって順序は多少異なる) 
    (1)木地に紙やすりをかけ表面をなめらかにする
    (2)表面に白の絵の具を塗る(定規などで均一にする)
    (3)黒の絵の具で仕掛けをする(凸凹をつける)
    (4)好きな色を一面に塗る
    (5)赤と青の絵の具で市松模様をつける 
    (6)金色→銀色を一面に塗る
    (7)好きな色を2〜5色塗る
    (8)サラダ油をつけながら紙やすりで研ぐ
   次の写真は,工程(8)のようすである。

(5) 考察
o大量生産されている製品と伝統工芸品を比べさせ,そのちがいに目を向けさせて問題
意識をもたせるという方法については幾つかの先行実践がある。有効な方法である。特
に津軽塗の唐塗については,職人の熟練した技術が感じられ,美しさと深みの違いがは
っきりしている。単元の問題づくりにあたって子どもたちから,色・つや,雰囲気・重
みなどいろいろな意見が出された。
o津軽塗もどきの製作にあたっては,時間配分も問題となった。(2)〜(7)の水彩絵の具
を塗り重ねる工程は連続して出来ない。一度塗った色が乾いてからでないと次の塗りが
出来ない。そこで,図工の時間を連続して何時間か設定するのではなく,他の教科の学
習の合間をみながら,塗りをすることになった。教室内に乾かす場所をセットし,頃合
を見ながら塗り重ねていった。
o津軽塗もどきづくりの醍醐味は,本物の製作の時と同様,「研ぐ」工程である。サラ
ダ油を使って研ぎ出す場面では子どもたちが特に熱心に取り組んでいた。
o自分でつくった津軽塗もどきを本物と比べてみると,「大量生産されたもの」よりは
本物に近いという子がほとんどであった。これは本人の「苦労」が思い出されるせいも
あるからだろうか。しかし,どうも物足りない。津軽塗の本物の美しさや深みはどうや
って出てくるのだろう,もっと追究してみようというようになった。導入段階としては
有効であった。
o津軽塗についての調べ学習は,津軽塗団地の見学と弘前市の社会科研究会が制作した
副読本を使って進められた。津軽塗の秘密に迫るという問題意識を持った子どもたちは
主体的に追究活動に取り組んでいた。
o津軽塗の学習を終えてから,全国の塗り物についてくわしく調べようという子どもが
出てきた。全国伝統工芸品総覧をもとに,教師がパンフレットの入手先について助言・
支援したので調査活動が充実した。
o家庭にある全国各地の伝統工芸品を持ち寄る(無理のない範囲で)という活動では漆
器の他に,陶磁器・織物・木工品・竹製品など多彩な工芸品が集まった。学級全体で学
習した場合,より多くの実物に触れることができるということが実証され,有効な活動
であることがわかった。
o改善点としては,津軽塗の工場を見学した後,見学してわかったことを整理し,以後
の学習計画を明確にする必要があるということである。学習を広め・深めていくための
教師の支援が問題である。

[5].おわりに
 土器づくりや津軽塗もどきの製作を通して,自分とのかかわりを大切にしながら,身
近な社会事象に目を向け,意欲的な学習が展開することができた。改善した点について
は,さらに実践し,問題点を探っていく必要があると考えている。

 体験的学習活動も含め,子どもの学習意欲を高めるための教材開発として,これまで
弘前大学教育学部教科研究紀要で次のような単元の実践例について述べてきた。
 4年 わたしたちのくらしとゴミ (給食室の生ゴミのゆくえ)──────第22号
 5年 水産業のさかんな地域──────────────────────第22号
   (水揚げ高の多い八戸から弘前市に水産物があまり送られていないわけ)
 5年 工業のさかんな地域と弘前市の結びつき──────────────第15号
    (陸奥製菓で使われる原料や材料)
 5年 自動車工業    (一台の船に積み込まれる自動車)───────第20号
 5年 わたしたちの国土 (青森県のスキー場  )───────────第17号
 5年 森林を守る    (白神山地のブナ林  )───────────第23号
 6年 歴史を学ぶ    (弘前市取上の貴船神社)───────────第17号
 6年 明治の新しい世の中(明治天皇東北御巡幸 )───────────第20号
 6年 明治の文化    (弘前市の洋風建築と堀江佐吉)────────第23号
 6年 国際交流     (オリンピックでメダルを獲得しなかった国)──第23号

 本稿では,特に体験的学習活動に焦点をあて,体験的活動を組み入れた2つの単元に
ついて学習過程を中心に述べた。これからも資料収集と調査活動を続け,子どもの学習
意欲を高めるため教材の開発に努めたいと考えている。
 最後になりましたが,本稿の作成にあたり貴重なご意見を戴きました,「社会科を語
る会」の先生方,また,資料収集にご協力戴いた方々に深く感謝致します。

引用・参考文献
(1)文部省 平成5年 小学校社会指導資料  東洋館出版社
(2)文部省 平成7年 小学校社会指導資料  大阪書籍
(3)北俊夫 1993 社会科体験学習 授業いきいきヒント事典 明治図書
(4)社会科教育,no.374 新学力で「体験・資料・発問」ドウ見直スカ 1993 明治図書
(5)社会科教育,no.384 「価値ある体験活動」をどう精選するか 1993 明治図書
(6)授業が生きる楽しいものづくり 1987 授業を創る社
(7)天内純一 1992 1993 自分とのかかわりでとらえさせる社会科学習の実践[1],
[2],弘前大学教育学部教科研究紀要第15号・17号
(8)秋元直子 平成5年度 初任者研修会指導案
(9)全国伝統工芸品産業振興協会 平成2年 全国伝統的工芸品総覧
(10)古川清行 1986 豊かな活動を生み出す社会科学習 小学館
(11)文部省 平成元年 小学校指導書社会科編 学校図書
(12)各社の社会科教科書 平成7年
     中教出版  東京書籍 教育出版 学校図書 大阪書籍 光村図書
(13)各社の社会科教科書(平成8年度使用予定)
     日本文教出版 東京書籍 教育出版 大阪書籍 光村図書
(14)天内純一 1994 1995 問題解決を重視した小学校社会科の学習指導[1]・[2],
弘前大学教育学部教科研究紀要第20号・22号


はじめのページへ