午前5時間制の意義と問題点

                                       平賀東小学校  J・A


   
要    約

  教育改革のために提案された午前5時間制について,提唱者である森信三氏の著書
 「 教育的実践の諸問題  」をもとにその経緯と概要を調べながら, 午前5時間制が目
 指す学校運営と子ども像に迫ってみた。また, 午前五時間制に取り組んでいる学校の
 実態、 問題点を, 平賀町内の小学校の資料や平賀町立平賀東小学校での実践をも
 とに探りながら,教育現場における教師のゆとりと望ましい日課表のあり方を考えた。
         

[キーワード] 小学校,学校運営,午前5時間制,ゆとり,総合的学習,横断的学習

  


 T.はじめに

    4月に赴任した平賀東小学校では,教師と子どもにゆとりを与えるというねらいを持・・・・・
  ち午前5時間制という画期的な学校運営に取り組んでいた。 これまで午前4時間という
  固定化された日課表だけ経験してきた筆者にとって, 午前中に5時間もの授業が行われ
  るという日程は非常に新鮮なものにみえた。同時にこの学校運営に対する戸惑いや疑問
  もあった。そこで,午前5時間制について,その意義と問題点を探りながらより理想的
  な午前5時間制を求めてみようと考えた。
   ところで,新学習指導要領が提示され,地域や学校の実態に応じた独自の学校教育に
 重点がおかれるようになった現在の教育界で,午前5時間制は次のような点から大きな
 意味を持つものと考える。まず,午前中(昼食前)に教科の学習をほとんど終えるため
 午後は学校独自の教育活動が展開できることである。また,教師にゆとりがうまれ子ど
 もをより広い視野から見つめることができ,子ども一人一人の個性を認めながら,個を
 生かした教育活動が展開できる。これらの詳細については研究のまとめの項で述べるこ
 ととして,まず,午前5時間制が提唱された経過や現在の午前5時間制の日課表につい
 て述べながら,その意義と問題点を明らかにしていきたい。
 


 

 U.研究の目的

  o午前5時間制が提唱された由来と経過を調べ,学校運営上の意義と問題点を明らかに
   する。
  o平賀東小学校における実践を通して,その効果と問題点を探る。
 


 

 V.研究の方法

  o森信三の著書から午前5時間制提唱の由来を調べ,実際の教育現場に照らして考察を
   加える。
  o資料をもとに午前5時間制に取り組んでいる学校を調べる。
  o平賀東小学校を中心に午前5時間制に取り組んでいる学校の実情と問題点について, 
    教師の側と子どもの側の両面から考察する。
 


 
 

 W.研究の実際

 1.午前5時間制の提唱と経過

   午前5時間制は,神戸大学教育学部教授であった森信三氏(以下敬称略)が1956年・・・・
  著書「教育的実践の諸問題」の中で提唱したものである。森信三は神戸大学時代に多数
  の著書を表し,戦後の荒廃した時代に日本の独自の教育の再建をめざし,人間教育に
  力を尽くした方である。  
   退官後も積極的に啓蒙活動と執筆に取り組み,全国を行脚して講演会や研究会に出席
  して午前5時間制をはじめ立腰教育・挨拶など教育の諸問題について自説を広めた。平
  成の時代まで続けられた啓蒙活動により全国的に森信三の教育理論に共鳴する教師が数 
  多く現われたという。  
   1993年平賀東小学校の校長となった木村光男氏は,この森信三氏の理論をもとに
  午前5時間制に取り組んだ。(前任校でも2年間実施されている。)  1996年校長は 
  栗林欣一氏に代わったが午前5時間制は引き継がれ現在に至っている。
    この間,平成7年,当時の校長であった木村光男氏が岐阜市で開催された学校週5日 
  制対応の研究協議会において「日課時程にかける夢」と題して実践を発表した。また、 
  日本教育新聞に「週5日制下で注目の実践」として紹介された。これらのことから注目 
  を浴び,視察のために平賀東小学校を訪れる学校や教育機関が現れた。
   平成8年度の記録によれば,岡山(軽部小・石相小・県校長会),愛知(前山小・南 
  中・新川小)新潟(上越大学院)岩手(盛岡市校長会・中妻小・釜石校長会)秋田(大
  内町校長会)計112人である。また,資料の送付を求められた学校や教育機関は,北
  海道から沖縄まで26道府県53箇所に及んでいる。
    それらの学校の中から,実際に午前5時間制の実践に取り組む学校が現われた。NH 
  K「教育Today」の番組で登場した岡山県赤坂町軽部小学校をはじめ,石相小,中妻小な
  どである。

   ところで,森信三の提唱した午前5時間制とは別に,学校運営の理想的な姿を追い求 
  めるうちに午前5時間制を取り入れるに到ったという学校がある。
  青森県三戸郡田子町の清水頭小学校である。当時の校長であった赤坂重信氏は,「学 
  校の活動の中から無駄をできるだけ省き,子どもの自主性に焦点をあてた活動をさせた
  い」という願いをもとに実践を積み重ね,午前中に教科の学習を終えてしまうという日 
  課表を生み出すに到った。この清水頭小学校の教育理念に影響を受けた学校の中から午 
  前5時間制に取り組む学校も現れている。倉石村又重小学校,階上道仏小などである。 
  (この清水頭小の午前5時間制については,機会があれば次回以降の論文で述べてみた
   い。)

 


 

  2.さて,森信三の提唱した午前5時間についてであるが,次のように3つの主要項目に・・・
    分けてその概略に触れてみることにする。(以下,「教育的実践の諸問題」から)

   A 午前5時間制提唱まで

   森信三は午前5時間制を「私の一代の思索と体験と,而してその全閲歴の結晶」と言
  い切っている。その背景にアメリカ的新教育に偏するのではなく,実際の日本の教育現 
  場に存在する数々の問題や子どもの現実の姿から出発するという信念がある。
    森信三の教育観を支える二大支柱は,学級単位としては生活綴り方,学校運営とし
  ては「午前5時間制」である。午前5時間制が森信三の教育観の中で非常に大きな比重
  を占めているのである。
    森信三は,戦後の第一期としては「教育再建の方途」として,主として基礎学力の充 
  実の具体的方策を説いた。
    第二期には学校運営に到り,学校の一日に絞って教育再建を考えた時如何にある
  べきかを問題とした。
    第三期として「午前5時間制」に到達する。
  このようにして到達した午前5時間制という「革命的方案」とはどのようなものであ 
  ろうか。次項に述べていくことにする。
 

  B 午前5時間制の内容

   午前中に5時間の授業を終えてしまう主な理由として次の3点があげられている。

  @午前と午後のちがい
   学校生活の内容を昼食を境として根本的に変えることが,一日の学校生活をもっと
   も有効にすることができる。
  A教師側において教材研究を本格的に継続できる時間を持ちたい。
  B子どもの側における「がん」ともいうべき宿題の根絶を計りたい。

  @の補足として,昼食前に精神が緊張する例をあげている。
    ・篤農家の朝の草刈り ・相撲取りが土俵に上る日 ・50メートル競争
    ・音楽家の演奏    ・医師の診察
   等がそれである。
    また,「午前中の授業においては学年始めに予め決められたもの以外は,天災地変,
  その他これに準ずるような重大事の起こらない限り,絶対に欠かないことにする」とし 
  ている。
   「例えば,運動会や学芸会の準備などにあてる時間は内心とがめながらやっているのが 
  現状だが,午前中に授業を終えてしまって,午後にすれば晴れやかな気持ちで行なうこ 
  とができる」としている。確かに教育現場ではいろいろな行事に関わって準備などの時 
  間を何時間もとっている。それらの時間を行事として計算すれば,たちまち教科学習の 
  時間数を圧迫し教科の時間数が不足してしまう。そのため,それらに費やした時間を国 
  語・音楽・体育などの教科として時間数を計算することがある。そのため,指導要領に 
  定められている時数を,真の意味で充足しているとは言えないのである。
    午前5時間制をとれば,これら行事に付随した時間を教科の時数として計算しなくて
  も授業時数が充足される。

  Aについて
    「現状では1年から6年までの全教科を通覧しえないばかりか,1教科でもなしうる 
  人は少ない。甚だしい場合は,自分の受け持っている学年の教材さえ,全教科となれば 
  通覧できていない教師も少なくないのではないか」と指摘している。
    確かに,小学校では教科の数は多い(国語・社会・算数・理科・音楽・図工・家庭・ 
  体育・生活)。また,1年生〜6年生と学年によっても学習内容が異なる。これに対し 
  て指導する側の教師に,これらの学習に必要な教材(学習材)を研究する時間は大幅に
  不足している。学習内容の系統性を充分把握せず授業に臨むこともある。
    学習内容を熟知した教師が,真に「ゆとり」を持って子どもの教育に向かえると考え 
  れば,そのための研究の時間は不可欠である。

  Bについて
    「学習は学校ですませ,校門を出る時は『わらすご一本といえども借金なし』という
  ことにしてやりたい。もっとも,誤解のないように付則すると子どもが家で自発的に勉
  強するのはただ望ましいばかりか喜ぶべきことに相違ない」としている。
    「学校でoooごっこや紙芝居をさせられながら,家に帰って山の字,川の字など同
  一の文字をタテに20字近くも書かされたり,全く形式的な算数の計算問題などをささ 
  れている(原文のママ)・・・・・」というのは鋭い指摘である。家庭学習が持つ真の意味を
  考え直す必要がある。

 


 
 
 3.午前5時間制に取り組んでいる学校

    これまで述べてきた森信三の教育理念に基づいて午前5時間制に取り組んでいる小学・・
  校はどのくらいあるのだろうか。その実数はよくわからない。これらについて触れた資 
  料の数が少ないからである。
    そこで,以下のような方法で調査した。
    ・平賀東小に残る資料 
    ・県内で午前5時間制に取り組んでいる学校への問い合わせ
    ・インターネットによる検索,個人的に所属している教育関連のML(メーリングリ  
    スト)の会員への問い合わせ
    ・森信三の出身地である愛知県半田市の教育長をしておられる間瀬泰夫氏との交流
    ・その他
   その結果,次のような学校がわかった。平賀町では,平賀東小学校の他に小和森小学
  校,大坊小学校,広船小学校があり平賀町では計4校が取り組んでいる。また,県内の 
  津軽地方では黒石市中郷小学校,弘前市の時敏小学校の2校が午前5時間制に取り組ん 
  だが黒石市内・弘前市内の何れでも他の小学校には広まらなかった。なお,弘前市の時 
  敏小学校は平成10年度から午前4時間制に戻った。その理由の主なものとしては,
    ・休み時間が短いため午前中にゆとりがない
    ・午前中に各教科の学習が集中するが,教師主導の授業が展開されることがある。
    ・給食が遅い。
  父母からも午前4時間制を支持する声が多かったようである。
    これらの学校の他に,前述したように県内では田子町清水頭小学校,倉石村又重小学
  校,階上町道仏小学校がある。上北郡では三沢小学校が取り組んでいる。他県ではNH 
  K「教育Todey」に紹介された岡山県赤坂町立軽部小学校・石相小学校,岩手県釜石市中
  妻小学校,八幡浜市立千丈小学校がある。
    これらの学校の実態や問題点は概ね次の項(平賀東小の実践)で述べることと共通し
  ている。
    ・授業時数の確保
    ・時間的なゆとりが持て,自由遊び・一人学び・学校での宿題・読書などを通して児
     童の自主性や創造性が育つ。
    ・研究会などへの参加の時間の確保。
    ・教師が勤務時間内に教材研究・個に応じた指導・教育活動をすることができる。
  ただ,同じ午前5時間制といっても,目ざす子ども像や学校運営のあり方によって日
  課表に違いがみられる。
 


 
 
 
  
 4.午前5時間制の日課表

   午前5時間制の日課表には概ね次のような特徴がある。次のページの日課表を参照し・ 
  て戴きたい。平賀町の各小学校の学校要覧(平成10年度)から抜粋したものである。 
   まず,90分の授業時間を基本としていることである。1・2校時,または3・4校
  時が90分である。2時間続きの授業である。この間の2教科の時間配分は教師の裁量 
  に任せられていて,1校時の学習が一段落したところで次の別の学習に入るというのが 
  一般的である。1・2校時の時間配分は教師によって異なる。ただ,後述するが2教科
  を2時間で学習するのであれば,従来の午前4時間制と変わりはない。2教科ではなく 
  1教科か合科での2時間続きの学習が望まれるところである。
   次に休み時間は基本的に無しか,5分以下である。この場合の休み時間は,休憩では
  なくトイレタイムと考えているので短くてもよいのである。5分の時間を日課表に入れ 
  ていない場合も多い。これはトイレに行く時間も授業の流れの中の一つであり学習の連
  続の中での行動と考えるからである。トイレタイムを1〜5校時までの間に何回とるか
  また,中間休みの長さをどうするかによって各校に違いがみられる。
   次に中休みについてであるが,これは学校によって違いがみられる。
   平賀東小学校の場合は,1・2・3校時終了後に設定しているリラックスタイムの時 
  間が25分と長い。それまでの学習で蓄積されたストレスを発散させることをねらいと 
  している。
    これに対して中休みを15分で充分としている学校もある。この場合は給食を早めに 
  し,放課後に休み時間を確保している。
    また,平賀東小学校の場合,給食と昼休みの時間を合わせると80分ある。これは子
  どもの遊びの時間を放課後ではなく,中間ないし昼に充分に確保してあげるという考え
  による。
    その他,読書・ステップ学習・ふれあいなどの活動時間をどこに設定するかの違いが
  ある。午後にそのような時間をとると,帰りの会の終了時刻は午前4時間制とあまり変 
  わりがなくなる。
   ところで,ここで確認しておかなければならないことがある。竹館小学校は午前4時
  間制をとっているにもかかわらず帰りの会の終了時刻が早い。それは,1・2時間目, 
  3・4時間目の授業の連続などによるものである。また,業間活動のカットにもよる。 
  竹館小学校との比較でわかることは,午前5時間制だけが午後の時間のゆとりをも
  たらすものではないということである。時間的なゆとりというよりは,午前と午後の学
  習内容の違い(午後は教科の学習が少ない)による精神的なゆとりと考えるべきではな
  いか。このことは午前5時間制を考えるうえで大きなポイントとなるので後の項で再度 
  れたい。
 

 

(平賀東小学校)        (平賀町立小和森小学校)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

       (平賀町立大坊小学校)     (平賀町立竹館小学校)午前4時間制



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 5.午前5時間授業の意義(平賀東小学校の平成10年度の実践から)

 A 子どもにとっての午前5時間制

  @午前と午後の生活を根本的に変えることによって気分転換ができ,学校生活が充・・・・・
   実する。

  Aゆとりある休み時間の確保
    中休み・昼休みを合わせると,70分の時間を確保出来る。この時間を利用して  
   リフレッシュ,集団の中での仲間づくり,遊びを通しての心と体の成長がなされて 
   いく。例えば,一輪車・竹馬集会,すもう大会,ずぐり回し大会など本校ではユニ  
   ークな行事を開催しているるが,その背景には豊富な休み時間がある。
    また,本校の校庭には大きな坂があり雪遊びもさかんである。中休み25分とい 
   う時間は,校庭に出てある程度遊んでも授業に間に合う時間である。15分程度で  
   はゆっくり校庭で遊ぶことができない。

  B読書量の増加と立腰タイム
    週4回の午後の全校タイムを利用して,ゆとりある読書の指導ができる。全校集 
   会での称賛・表彰によってさらに読書への意欲が高まる。
    森信三が提唱している「腰骨を立てた姿勢」が自然に身につくように立腰タイム  
   をとっている。特設の時間だけでなく,学級で授業時間や朝・帰りの会にも取り入  
   れることによって,立腰の姿勢や心構えが子どもの中に息づいていく。

  C放課後の時間を利用した個別指導など
    学習の遅れている子に対して,基礎的な学習理解・ドリルなどの時間が確保でき  
   る。

  D子どもの学習意欲の持続
    チャイムによって画一的に時間を区切るのではなく,子どもの意欲に合わせて学 
   習時間を設定できる。1・2校時,3・4校時などを90分授業と考えるため,前  
   半・後半の時間を弾力的に運用し,児童の興味・関心や学習意欲に合わせて学習内 
   内容を切り替えることがことができる。また,90分全部を使う学習を設定するこ  
   ともできる。ただし,これは午前5時間制だけの特徴ではない。ノーチャイム制を  
   とれば可能なことである。次にあげるEも同様である。

  E学習の深化と精選(例として)
    例えば,1・2年の生活科においては,90分またはそれ以上の時間を設定して  
   学習することが多いが,学校全体がノーチャイムで動いていれば学習が中断される 
   ことがなく,活動も連続してできる。秋であれば「秋を探そう」という単元がある。 
   落葉さがし・落葉を使った活動,どんぐを使ったクッキーづくりなどが考えられる 
   がいずれも45分で切られる学習活動ではない。
    また,国語において段落の要点を読み取るという学習があるが,それぞれの段落 
   の学習にかかる時間は均一ではない。長い段落と短い段落があれば,その場合即座 
   に対応して段落の細読が終わった時点で学習を終えて次の教科に移ることが可能で 
   ある。
 

 B 教師にとっての午前5時間制

  @教師のゆとり
   午後に授業が少ないということによって教師に心のゆとりができる。教師のゆとり 
  が表情や動作に現われ,子どもにもゆとりが生まれる。また,放課後の時間を利用し 
  て教材研究が充分にできる。児童観察や個別指導にも時間をとれる。(主に1〜4年) 

  A補欠授業への対応
   小学校の現場では出張が多い。その中で学級担任が出張などで学級をあける場合は
  どのぐらいあるのだろうか。平賀東小学校の一年間を調べてみると,およそ次のよう 
  になっている。 

   ・平賀町に関するもの(打ち合わせも含む)
     町小連体  町球技大会  町芸術鑑賞会  町音楽会
     町の文集  町教振の各部会ごとの研究会  児童サミット
      (国・社・算・理・生活・音・図・家・体・道・特活など・・・各部会ごとに日にちが異なる)
     お話会
     町研修主任研修会
     生徒指導連絡協議会
     学校保健会
     給食主任会議

   ・郡や県,その他(打ち合せ)
     文集「みなみ」   感想文集「心の目」
     小教研各部会の打ち合せや研究会
       (国・社・算・理・生活・音・図・家・体・道・特活など)
     小教研の理事会(関係者は3人)
     生徒指導研修会
     特殊学級研修会  教育相談員としての出張(年間を通して火曜日の午後)
     5年次研修
     宿泊訓練指導者講習会

   ・研修会などへの出席(休業日のものを除く)
     弘前大学附属小公開研究会(2人)
     筑波大学附属小公開研究会(3人)
     五戸小公開研・英語

   ・職員の健康診断(人間ドック・レディース検診など)

   ・夏季休暇
     一人が3日間ずつとれるので,単純にのべ日数を計算すると39日となる。

   ・この他の私的な休暇や服忌休暇・育児休暇

    これらの会議や研究会に出席した場合,その教師の学級は「自習」となることが 
   多く,そのため教育課程の中に位置付けた教科や領域の学習が充実したものになら 
   ないことがある。これを解消する手立てとして,午前5時間制は効果がある。出張  
   は午後からのことが多いが,自習ではなく午前中に教師が実際に指導できる時間が  
   増えるからである。小学校の場合担任が指導するか否かによる教育効果の差は大き

  い。                                                 

 
 

 6.午前5時間授業の問題点(平賀東小学校の実践から)

  A 子どもの側からの問題点

   @1・2時間目の間に休み時間がないことになっているが,実際にはトイレタイムを・・・・・
    とらざるを得ない状態である。また,90分授業で学習意欲を持続できない子もい  
    る。
   A休憩(トイレタイム)の時間や教室移動の時間が学級によって異なるため,他学級  
    への配慮をした行動がとれるように,低学年からしっかり習慣づける必要がある。  
    B給食の始まる時刻が12:35分と遅い。この生活リズムになかなか馴染めない子 
    もいる。
   C長い休み時間をうまく活用できる子とそうでない子がいる。休み時間を持てあます 
    子もいる。

  B 教師の側の問題点

   @求められる教師の主体性
     学習が午前に集中した日課の中で子どもを育てるためには,児童の特性・学習意  
    欲の持続・学びの姿など,解明されなければならない研究課題が山積している。そ  
    のための理論研究と日々の研究実践が大切である。「研修意欲溢れる教師」が求め 
    られる。
   A求められる教材研究の深化
     学習が45分刻みで終了するわけではない。90分の学習と考えると,2つの教  
    科の時間配分をどうするか。また,1・2・3校時を135分の学習と考えた場合 
    ,3教科の時間配分をどうするか。さらに,合科的な指導を取り入れた場合,年間 
    計画をどうするか,実践の積み重ねが必要とされる。 
     ところで,午前5時間制は総合的・横断的な学習に適していると考える。詳細は 
    まとめの項で触れる。
   B高学年担当者には思ったほどゆとりがない
     平賀東小の場合課外の部活動が5つある。(野球・ソフト・相撲・卓球・陸上) 
    教師もそれぞれの部活動を担当しているため,16時過ぎは部活動の指導をしなけ 
    ればならない。6時間目の授業と帰りの会の終わるのが15:40分であるから,  
    部活動が始まるまでの時間にあまり余裕はない。本来,午前5時間制のよさは放課 
    後のゆとりにあるのだが,本校の現状は放課後にゆとりがない。そのため教材研究 
    や授業で使用した物の整理等のための時間はあまりとれないのである。
     部活動の指導に地域の人材を活用できないか,PTAとも話し合っているが解決 
    策はまだ見いだされていない。

  C学校運営上の問題

    @午前(昼食前)と午後の学習活動を変えること
      現在,3〜6年生の場合午後の6校時の授業が2回あるが,この時間に午前とは 
     異なる学習活動を行っていないのが現状である。学級数が13(特殊1を含む)と  
     多いため,3年生以上のすべての学級に,午後の特別教室の割り当てができないこ 
     とも原因の一つである。

    A午前5時間制によって生じたゆとりを子どもの遊びや読書に当てている。そのため 
      6校時後帰りの会が終了するのは15時35分になってしまう。森信三の主張する 
     「教材を通覧する」ための時間がとれず,教材研究が深まらない。その弊害は授業
     にあらわれる。午前4時間の場合と同じような授業が行われれば,当然授業の質は
     落ちる。ともすると,慌ただしい詰め込み式の授業となる。
     平賀東小のように「ゆとり」を子どもの「学校での遊び」にあて場合は教材研究の 

     の深化を教師一人一人の自覚に委ねることになる。                    

 
 
 X.まとめと今後の課題

 1.午前5時間制のよさを生かした日課表
   これまで述べてきたことから,午前5時間制のよさであるゆとりを最大限に生かすと・・
  すれば次のような日課表が最もよいと考えられる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

  この日課表の特徴は次のようなことである。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・教科の学習を昼食前に終え,以後の時間は,のびのびタイム,クラブ活動,委員会活
  動などにあてられる。子どもの自主的な活動と意欲・関心が大切にされる。
 ・午前中の学習の中でも,1・2・3校時と4・5校時は中休みをはさんでいる。ここ 
  では各担任の工夫により,連続した学習や横断的な学習がなされるように配慮する。
  図工・家庭科・生活科など2時間まとめどりが全校的に検討されなければならない。
 ・のびのびタイムの中には,行事の練習・読書・マラソンなど,子どもと教師の話し合 
  いによって計画されたものが入るが,画一的なものではない。
 ・土曜日は4時間の授業を行い,簡単な清掃と帰りの会の後に帰宅する。土曜日はとも 
  すれば一週間の疲れが蓄積すると考えられるが,日々の学校生活にゆとりのある午前 
  5時間制のもとでは疲労は蓄積されない。
 ・授業と授業の間にトイレタイムをとっていないという,これまでの形式は不自然であ 
  る。1時間のうちに5分ということを基本に,それぞれ5時間の授業の流れの中で適 
  宜5分間とる。
 

 


 

 2.新学習指導要領への対応

  午前5時間制の日課表は平成14年度から施行される新学習指導要領では,より効果
 を発揮できる。次の表からわかるように,午前中だけで25時間の時数が確保できる。
 
 
 
 
 

   6年生を例にとると,週の授業時数は27時間であり,その中に総合的学習を約3時間
  と学級活動を含んでいる。午前中の25時間で教科の学習はすべて終わるだけでなく, 
  さらに総合的・横断的に学習計画を組むことが可能である。これに午後(昼食後)の時 
  間を効果的に活用して,地域や児童の実態にあった総合的学習を展開すればまさに理
  想的な日課表となる。                                        

                            

 

 3.午前5時間授業の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   教師にとって真のゆとりは,単に時間的に余裕があることから生み出されるものでは
  ない。学校教育の中心を占めるのは子どもの学習活動であるから,指導者としての教
  師は教育のプロとして学習内容を深く理解していなければならない。教師のゆとりは,
  教育に自信を持った教師に現れるものである。
    午前5時間制の中で最も大切な教材研究は,学習をより横断的・総合的に進めるた
  めの研究である。午前中の5つの学習は小学生には厳しい。これらが細切れに行われ
  たら果たして学級の子どもの何人が主体的に参加できるであろうか。学習課題をできる
  だけ少なく絞りこむこと,これが子どもの学習意欲の継続に繋がる。
    例えば「太平洋戦争」の単元の学習を例にとれば,社会科・道徳・家庭科・図工・国 
  語の時間を利用して横断的・総合的に進めることが考えられる。具体的な内容は次の
  ようになる。
  
 例@
 

教科
指導要領の内容
 学習活動
家庭科
B食物──栄養を考えた食物のとり方がわかり,
1食分の献立をつくることができるようにする。 

(A被服)手縫いやミシン縫いにより・・・       

すいとん作り 

千人針

社会科
 Aシ──我が国にかかわる第二次世界大戦,日本
 国憲法の制定などについて・・  
人々のくらしや平
賀町から出征した
人々について調査
 道徳 3B──生命がかけがいのないもので・・・     原子爆弾(広島)
のVTR視聴   
図工 A表現──表したいことがよく表れるように・・   千羽鶴大作戦に参
加するための作品
づくり        
国語 A表現──主題や意図をはっきりさせ,表現する
       ことによって更に自分の考えを深める
戦争や平和につい
て自分の考えを作
文に書く。     

  例A       
                             
    社会科の時間───縄文時代の学習
    図工の時間────土器づくり

     ※この学習は,「模倣発掘」や「古代米づくり」,また,特別活動として三内 
     丸山遺跡の見学と関連づけて扱うこともできる。(詳細は拙著参照)

  例B

    社会科の時間───伝統工業         
    図工の時間────津軽塗モドキづくり 

     ※津軽塗りモドキづくりは工程ごとに10分程度の時間使うので,他の教科と    
      同時進行するのに適している。(津軽塗モドキづくりや伝統工業の単元構成    
      などについては拙著参照)

    このようにあるテーマや課題のもとに,学習が横断的・総合的に展開されれば,午前 
   中に5時間授業したとしても,子どもの追究意欲は持続される。
   午前5時間制をとるためには,さらに具体的な実践を積み重ねて,工夫された横断的 

  総合的な年間指導計画が必要である。これからの研究の課題としたい。         

 

 4.これからの研究の課題

  A 午前5時間制の歩みについて調査を継続する

   午前5時間制は1956年に森信三の著書によって提唱され,その後の啓蒙活動に・・・
  よって全国の教師に紹介された。その際にどのような反響があったのか,また,その 
  後の広がりや取り組みはどのようなものであったのか,およそ30年程の期間の足取 
  りがよくわからない。資料は少ないができるだけ解明する必要がある。

  B 午前5時間制における子どもの学びと時間配分を探る

   小学校1〜6年生の子どもにとって学習に集中できる時間はどのくらいだろうか。  
  それは,子ども自身の問題意識,追究意欲,教師の支援等によって異なるので,あ 
  る程度の幅があるが全体的な傾向を探る必要がある。
   子どもの学習に集中できる時間が,例えば1サイクル20分であるとすれば,その 
  1サイクルをどのように組み合わせて学習時間を構成すべきなのか。
   ノーチャイム制をとりながら,それぞれの学習活動に「適切な時間配分をする」た  
  めに実践を積み重ねながら,その留意点をまとめてみたい。

  C 横断的・総合的学習の具体的な実践

   午前5時間制における,横断的・総合的学習の重要性は前項で述べた。
  「太平洋戦争」の学習のような具体的な実践を積み重ねること,さらには,それらを  
  取り入れた場合の,教科全体の年間指導計画を作成することが急務である。年間指導 
  計画が存在しないまま,横断的・総合的学習を語ることはできない。最近,一つの単  
  元,一つの主題だけを提案する研究会があるが,やはり横断的・総合的学習は年間指 

 導計画をもとに考えるべきものである。                             

 
 
 引用・参考文献

  森信三 :1956年 教育的実践の諸問題 実践社・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  日本教育新聞記事(平成7年6月10日):週五日制下で注目の実践 日本教育新聞社
  日本教育新聞記事(平成7年6月17日):学校五日制どうする教育課程 
   日本教育新聞記事(平成8年4月13日):授業は午前5時間制 日本教育新聞社
   天内純一:1995年 体験を重視した社会科学習 弘前大学教育実践センター研究員報告書
  文部省:1998年 小学校学習指導要領(新学習指導要領)

 平賀東小に残るその他の資料

  高橋正好:1998年 「午前5時間制を始めて」 実践人10月号(No.503)
  木村光男:論文「日課時程にかける夢」 平成7年度
      学校週5日制対応の研究協議会(文部省)岐阜市で実践発表
  今井朗子:論文「午前5時間制」神戸外国語大学
  越宗公彦:発表資料「教育課程に位置付けた午前5時間の時程,実施にあたって」
       平成8年度 中国五県町村教育長研究大会(山口大会)
  紺野仁司:中央研修講座レポート 午前5時間制の実施 (中妻小)
  木村光男:午前5時間制の有効性と問題点
  大庭茂 :心身調和への希求 大庭茂先生遺稿刊行会 昭和53年

 平賀町の各小学校の要覧
 

 


このページは天内純一氏が作成しました。