第93回 教育・福祉とエレクトロニクス懇話会資料(2004.5.13)

高齢者のコミュニケーションを支援する「気になる写真立て」

弘前大学教育学部 小山 智史

 高齢化の状況、および高齢者を支援するコミュニケーション技術の動向を述べた後、試作した「気になる写真立て」の紹介をする。

キーワード: 高齢化社会, 高齢者, 支援技術, コミュニケーション, IT, アウェアネス

1. はじめに

 平成15年版高齢社会白書[1]によれば、2002年の日本における高齢化の状況は表1のとおりである。また、2003年度高齢者人口等調査(青森県高齢福祉保険課)によれば、青森県の高齢化率は、2002年が20.73%、2003年が21.28%と、全国平均を上回っている。なお、青森県内の市町村で最も高いのは岩崎村の36.84%(2003年)で、2050年の日本を代表していると言える。

表1 日本の高齢化の現状(「平成15年版 高齢社会白書」)
  2002.10.1 2001.10.1
日本の総人口 127,440,000人100% 127,290,000人100%
高齢者人口(65歳以上)
前期高齢者(65〜74歳)
後期高齢者(75歳以上)
23,630,000人
13,590,000人
10,040,000人
18.5%
10.7%
7.9%
22,870,000人
13,340,000人
9,530,000人
18%
10.5%
7.5%
生産年齢人口(15〜64歳)
年少人口(0〜14歳)
85,710,000人
18,100,000人
67.3%
14.2%
86,140,000人
18,280,000人
67.7%
14.4%

 高齢化は今後も進み、日本の高齢化率(65歳以上の高齢者人口が総人口に占める割合)は次のように推移すると見込まれている。

1950年
5%
1970年
7%超(高齢化社会)
1994年
14%超(高齢社会)
2002年
18.5%
2015年
26%
2020年
(後期高齢者が前期高齢者を上回る)
2050年
35.7%

 一方、高齢化の国際的動向は表2のように推移すると見込まれており、日本の高齢化は突出している。

表2 高齢化の国際的動向(「平成15年版 高齢社会白書」)
  1950年 2000年 2050年
世界の総人口 2,518,629,000人100% 6,070,581,000人100% 8,918,724,000人100%
高齢者人口(65歳以上) 130,865,000人5.2% 419,197,000人6.9% 1,418,742,000人15.9%
日本の高齢化率  4.9%  17.3%  35.7%

 また、一人暮らしの高齢者は以下のように増加している。

1980年
881,000人
8.3%
2000年
3,032,000人
13.8%
2020年
5,366,000人
15.5%

 このような状況の中で、高齢者の生きがいには社会や家庭の中で担う役割が大きく関係すると思われるが、内閣府が平成13年に60歳以上の男女に行った調査によれば、「家族・親族の中での役割」について「役割はない」との回答が男24.2%、女19.0%であった。ある研究会でも、参加者から「高齢者の居場所がない」ことが深刻な問題として提起されていた。

 以上のような日本の高齢化の状況に対して、高度に発達したIT関連技術がどのような役割を果たし得るかは重要な課題である。身体障害者の支援技術はさまざまな研究開発が行われ、また実用化されているものも多い。もちろん、加齢とともに現れる身体の障害に対して障害者支援技術が適用できる場合もあるが、高齢者を意識した支援技術については、携わっている人や組織も、また研究開発の事例も多くないのが現状である[2]。

 以下、2章では高齢者を支援するIT関連技術(主にコミュニケーション支援に関するもの)の動向を紹介し、3章では試作した「気になる写真立て」の紹介をする。

2. 高齢者を対象としたIT関連技術

 これまでに報告されている高齢者を支援するIT関連技術の中から主なものを以下に紹介する。

3. 「気になる写真立て」の試作

 生活空間に溶けこむコミュニケーションツールのひとつとして、「気になる写真立て」を試作した。その概観を図1に、使用イメージを図2に示す。


図1 気になる写真立ての概観



図2 気になる写真立ての使用イメージ

 従来のシステム([6]〜[17])では、相手の存在や行動に関わる情報を直接あるいは間接に伝え、「人と人とのコミュニケーション」が強く意図されている。これに対し、本装置は生活空間情報すなわち「相手が暮らす空間に関する情報」を伝える点に特徴がある(図2)。

 装置の内部は図3のようになっている。接続先はIPアドレスで指定し、温度、明るさ、音の有無の各情報を、0.3秒毎にtelnetプロトコルで相互に伝送する。また、それぞれの情報はLEDを用いて次のように表現し、いずれもリアルタイムで表示を更新する。