地上デジタル放送への移行に伴い、現在のアナログテレビ放送は2011年に停波が予定されている。今後の大量廃棄が予想されるアナログテレビを再利用する一案として、電光掲示板、デジタル時計、発表会用タイマーなどの装置を試作したので紹介する。
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地上デジタル放送への移行に伴い、現在のアナログテレビ放送は2011年に停波が予定されている。このことは、現在存在するアナログテレビの大量廃棄の問題に直結し、社会問題となることが懸念される。
平成18年3月の消費動向調査[1](調査対象は6720世帯)によれば、カラーテレビの普及率(所有している世帯数の割合)は99.4%、1世帯あたりの保有数量は2.503台である。また、平成17年10月の国勢調査[2]によれば、日本の世帯総数は49,566,305である。これから、現在国内で利用されているカラーテレビは1億2330万台と推計される。事業所や学校なども含めてより詳細に検討し、1億2000〜3000万台とする推計もある[3]。
また、電子情報技術産業協会(JEITA)の試算によれば、アナログテレビの普及台数は8580万台で、2007〜2011年に5037万台が地デジ対応テレビに買い変えられ、これに2011年時点でデジタルチューナーで使い続けられる分を除く1428万台を加えた6465万台がゴミになるとしている[4]。
まだ利用できる大量のアナログテレビをゴミとするにはあまりにもったいない。モノも人も大事にしたい。適当な再利用の途を見つけ、あと一活躍してもらってから廃棄すればよい。モノであれ人であれ、この世に生を得たからには役割を存分に果たしてその生涯を終えるべきだと考える。
アナログテレビの再利用を念頭に、いくつかの装置を試作した[5]。具体的には「電光掲示板[6]」「デジタル時計[7]」「発表会用タイマー[8]」である。今後、さまざまな方にこれらの装置のモニタを依頼し、次のようなフィードバックを得たいと思っている。
予め登録したメッセージをアナログテレビに表示する電光掲示板である。テレビ画面には16×16ドットの日本語文字が5文字表示できる。メッセージは緑と赤で交互にスクロール表示される。下図左がテレビに表示されたメッセージの様子、下図右が装置の内部で、装置とテレビをビデオケーブルで接続する。
メッセージはパソコンにテキストファイルとして作成し、書き込み装置を使って書き込む。テキストファイルの内容は、ある行のスクロールが終了すると次の行のスクロールが始まるようになっている。行末に「$」を置くと、行末の文字が表示された状態で1秒停止した後、表示が消えて次の行のスクロールが始まる。これで、少しばかり変化をつけることができる。
複数個のメッセージを登録しておき、ボタン操作で表示を切り替えることもできる。登録できるメッセージの長さは数100文字程度(主に表示する文字種の数で決まる)で、通常の用途では十分な長さである。
例えば次のような利用方法が考えられる。

なお、プログラム可能な小型ビデオ表示装置の初期のアイディアは2004年度の情報技術演習(院)の中で高橋学氏より出されたものである。
「アナログテレビに表示するデジタル時計」である。下図左のように時・分・秒がテレビ画面に白黒表示される。下図左がテレビの表示、下図右が装置の内部で、装置とテレビをビデオケーブルで接続する。ACアダプタで動作し、精度は月3秒程度である。
研究発表会などで使用するためのタイマーである。1〜3鈴が設定でき、設定時刻にブザー音が鳴る。下図左のようにテレビ画面には分・秒と1〜3鈴の設定値(写真では各々12分・15分・20分)が表示される。表示色は経過時間によって変化する。下図右が装置の内部で、装置とテレビをAVケーブルで接続する。
装置の主要な構成部品はワンチップマイコン(ATtiny85V: ROM 8kB, RAM 512B)とD/Aコンバータ(抵抗2本)である。下図はビデオ信号がどのように作られるかを簡単に説明したものである。図の右上が水平1ラインに対応するビデオ信号(横軸は時間)で、テレビのビデオ端子にはこのような信号を加える必要がある。時間とともにこのような電圧の変化が得られるよう、プログラムされている。ワンチップマイコンから出力される2ビットのデジタル信号は、D/Aコンバータで4値のアナログ信号に変換される。
プログラムで生成されるビデオ信号は、タイミングもレベルも規格外であるため、テレビによってはうまく表示できない可能性もある。しかし、これまで問題が生じた例はない。ビデオ信号の規格は厳密に定められているが、実際のテレビ装置は、低品質のVTRの再生信号(規格から大きく外れている)も表示できるように作られているためである。

ビデオ信号の発生方法は、主に[9][10]を参考にした。ワンチップマイコンの内蔵RAMの一部をビデオRAMとして使用し、plot()やput()などの共用ライブラリを用いてビデオRAMを書き換える。一方、割り込みを用いてビデオRAMを参照してビデオ信号を生成するようになっている。これにより、さまざまなアプリケーションプログラムを比較的容易に開発することができる。プログラムはC言語で開発し、コンパイルにはWinAVR[11]のgccを用いた。
電光掲示板の場合は、ATtiny85V内蔵の512バイトのSRAMのうち192バイトを96×16ピクセルのVRAM(実際に表示されるのはこのうち80×16ピクセル)として使っている。CPUはNTSCビデオ信号のカラーサブキャリアの4倍のクロック(14.32MHz)で動作し、カラーバースト信号に対して表示するビデオ信号の位相を90°ずつ変えることにより、4色を表現している。
文字フォントは、bdf形式で公開されている東雲フォント[12]の8×16ドットおよび16×16ドットを使用した。他のフォントも利用できるが著作権には注意を払う必要がある。日本語1文字の文字フォントデータは32バイトで表され、100文字分で3.2kBとなってしまう。このように、予めすべての文字のフォントデータをメモリ上に持つことはできないので、表示するテキストファイル中で使われている文字のフォントデータだけをbdfファイルから抽出し、フォントデータファイルを生成するようにしている。
アナログテレビの再利用を意図し、電光掲示板、デジタル時計、発表会用タイマーの3つの装置を試作した。改良すべき箇所も少なくないであろうし、電光掲示板は、上にも書いた以外のさまざまなシナリオで利用できるのではないかと考えている。また、これらの装置以外に新しい装置や潜在的な用途も掘り起こしたいとも思っている。アイディアを頂戴したい。また、モニタにご協力いただける方にはご連絡いただきたい。
私自身はデジタル放送の精緻な画面表示も双方向も必要性を感じていない。番組数も多過ぎて見きれないので、もっと番組を減らして精選すればいいと思っている。一方、大変な労力をかけて制作した番組を遡って見ることができないのは甚だもったいないので、何かしら「蓄積」の仕組みがあるといいと思う。