2011.9.2-

グラフで考える 「豆電球と乾電池」

弘前大学 小山智史

0. 豆電球を乾電池につなぐ

 小学校では豆電球を乾電池につなぐ実験をします。2個の豆電球を直列や並列につないで、明るさの変化を観察したりもします。ここでは、このような簡単な例をとりあげて、電気回路の初歩的な事項について、理解を深めます。

 今、1.5V 0.3Aの豆電球があったとします。この豆電球の抵抗は5Ωで、乾電池1個(E=1.5V)の場合I=0.3Aの電流が流れ、乾電池2個直列(E=3V)につないだ場合I=0.6Aの電流が流れます。この2つの場合を電圧-電流のグラフに表したものが、図0(c)の×です。他の電圧を加えた場合も、この2点と同一直線上のどこかの点になります。抵抗が小さい場合、抵抗が大きい場合は、図中のそれぞれの線上の点となります。抵抗は電流の流れにくさを表しています。このように、電圧や抵抗が変化した時に電流がどうなるかをグラフで考えるとわかりやすいことが多いものです。


(a)豆電球と乾電池の接続

(b)豆電球

(c)電圧-電流のグラフ
図0 豆電球を乾電池につなぐ

1. オームの法則とテブナンの定理

1.1 オームの法則

 図1(a)のように、抵抗 R[Ω] に電圧 E[V] を加えると、流れる電流 I[A] は

I = E / R
というのがオームの法則です。


(a)電圧と抵抗がわかっている場合

(b)電流と抵抗がわかっている場合

(c)現実の電源(電池)
図1 オームの法則

 図1(b)のように、抵抗 R[Ω] に電流 I[A] が流れているならば、抵抗の両端の電圧 E[V] は

E = I × R
となります。

 抵抗に電圧 E[V] が加わり、電流 I[A] が流れている時、抵抗で消費される電力 P[W] は

P = E × I
となります。

 オームの法則によれば、Rを小さくするといくらでも大きな電流を流すことができ、従っていくらでも大きな電力を取り出すことができるように見えます。そのような電圧源を「理想電圧源」といいます。しかし、実際の電圧源(例えば電池)には図1(c)のように「内部抵抗」が存在するため、そうはなりません。電池に接続したモータや豆電球に加わる電圧 E は E0 から I×R0だけ電圧が小さくなった値になります。これをR0による「電圧降下」といいます。

E = E0 - I × R0
引き算であることに注意してください。

(練習) 5Ωの抵抗に1.5Vの電圧が加わっている時、流れる電流はいくらか。また、抵抗で消費される電力はいくらか。

(練習) 下図のように、電圧 E0=1.5V、内部抵抗 R0=0.3Ω の電池にモータをつないだら 1A の電流が流れた。モータに加わっている電圧はいくらか。また、モータで消費される電力、電池の内部の抵抗で消費される電力はそれぞれいくらか。

(練習) 下図のように、3Vで動作するマイコンに抵抗Rが接続されている。簡便のため、15番ピンはマイコン内部で20番ピン(Vcc)に接続されているものと考える。マイコンの定格により、ピンから流れ出す電流を20mA以下にしなければならない。抵抗 R はどのような値でなければならないか。

1.2 電圧と電流のグラフ

 ここでは、簡単な回路をとりあげ、電圧と電流の関係をグラフで考えてみます。

 図2(a)のように、電圧 E0 内部抵抗 R0の電池に抵抗 R を接続したとします。


(a)電池に抵抗を接続した回路

(b)電池のIとE

(c)抵抗のIとE

(d)電圧Eと電流Iのグラフ
図2 電圧と電流の関係

 ここで、図2(a)を破線の左側と右側に分けて考えます。

 まず破線右側だけを取り出したものが図2(c)で、抵抗 R の両端の電圧Eとそこに流れる電流 I の関係は

I = E / R
で、これが図2(d)の右上がりの直線となります。電圧をいろいろ変えると、電流はこの直線上で変化するということです。

 次に、破線左側だけを取り出したものが(b)で、E は E0 から R0 による電圧降下 I×R0 だけ小さくなった

E = E0 - I × R0
ですから、
I = ( E0 - E ) / R0
となります。これが(d)の右下がりの直線です。(b)で破線の右側に何を接続しようとも、E と I はこの直線上の値になるということです。開放時は E 切片の E0、短絡時は I 切片の E0/R0 になります。

 図2の(b)と(c)と接続して(a)のようにした場合は、どちらの直線上にもないといけませんから、両者を満たす点として、2つの直線の交点の電圧と電流になります。この点を「動作点」といいます。抵抗の場合はグラフを使わなくても数式で計算すれば動作点は求まりますが、2章以降で取り上げる電球やLEDやトランジスタなどの非線形素子(電圧電流特性が直線ではない素子)ではそうはいきません。

1.3 抵抗の直列接続と並列接続


(a)直列接続

(b)並列接続
図3 抵抗の直列接続と並列接続

 図2(a)のように、ふたつの抵抗 R1 と R2 が直列接続され電流 I が流れているとします。それぞれの抵抗の両端の電圧は

E1 = I × R1
E2 = I × R2
でその和が E となるので、直列接続した抵抗の合成抵抗値は
R = E / I = ( I × R1 + I ×R2 ) / I = R1 + R2
となります。電圧 E が、R1とR2の比でE1とE2に分けられるとみることもできます(分圧)。
E1 = E × R1 / ( R1 + R2 )
E2 = E × R2 / ( R1 + R2 )
となります。

 図2(b)のように、ふたつの抵抗 R1 と R2 が並列接続され電圧 E が加わっています。それぞれの抵抗に流れる電流は

I1 = E / R1
I2 = E / R2
でその和が I となるので、並列接続した抵抗の合成抵抗値は
R = E / I = E / ( E / R1 + E / R2 ) = 1 / ( 1 / R1 + 1 / R2 ) = R1 × R2 / ( R1 + R2 )
となります。電流 I が、1/R1と1/R2の比でI1とI2に分けられるとみることもできます(分流)。また、この合成抵抗の計算式を
R = R1 // R2
のように書くことがあります。

(練習) 100Ωと150Ωの抵抗を直列接続した時の合成抵抗値はいくらか。また並列接続した時の合成抵抗値(100//150)を計算しなさい。

(練習) 以下の回路で、(1) 600Ωと200Ωの並列接続の合成抵抗値(600//200)を求めなさい。(2) 3Vの電圧が300Ωと(1)の抵抗で分圧されると考え、Eを求めなさい。

1.4 テブナンの定理

 図3(a)のような電源と抵抗からなる複雑な回路(図中破線部)があった時、破線の中の回路は(b)と等価であるというのがテブナンの定理です。


(a)電源と抵抗からなる複雑な回路

(b)等価回路

(c)例
図4 テブナンの定理
もしも複雑な回路の中がわかっていれば、その開放電圧 E0 と、短絡電流 I0 から R0
R0 = E0 / I0
で求めることができます。

 破線部の中が図4(c)であった場合、(b)の等価回路がどうなるかを考えてみます。開放電圧 E0と 短絡電流 I0

E0 = E1 × R2 / ( R1 + R2 )
I0 = E1 / R1
となります。従って、R0
R0 = E0 / I0 = R1 × R2 / ( R1 + R2 ) = R1 // R2
となります。つまり、R0 は R1//R2 になるということです。

(練習) 下図(a)で E を求めたい(これは前節の練習と同じ問題です)。
(1) 200Ωを切り離し、破線部について開放電圧と短絡電流を計算しなさい。これから、(b)の等価回路のE0とR0を求めなさい。
(2) Eを求めなさい。


(a)回路

(b)等価回路

2. 乾電池と豆電球

2.1 豆電球の点灯

 ここに 1.5V 0.3A の豆電球があります。豆電球の抵抗値は、

R = 1.5 / 0.3 = 5 [Ω]
です。この豆電球を乾電池に接続すると電球が光ります(図5)。当面、電池の内部抵抗は考慮しません。この時の豆電球の消費電力は
P = E × I = 1.5 × 0.3 = 0.45 [W]
です。実際には光になるのは消費電力のごく一部で、ほとんどは熱になります。


図5 豆電球を乾電池につなぐ

2.2 豆電球の並列接続

(練習) 1.5V 0.3A の電球を2個用意し、並列に接続する(図6(a))。それぞれの電球の消費電力はいくらか。また合わせていくらか。

(練習) 1.5V 0.3A の電球1と、1.5V 0.6A の電球2を用意し、並列に接続する(図6(b))。それぞれの電球の消費電力はいくらか。また合わせていくらか。


(a) 同じ電球の並列接続

(b) 異なる電球の並列接続
図6 豆電球の並列接続

2.3 豆電球の直列接続

(練習) 1.5V 0.3A の電球を2個用意し、直列に接続する(図7(a))。それぞれの電球の消費電力はいくらか。また合わせていくらか。

(練習) 1.5V 0.3A の電球1と、1.5V 0.6A の電球2を用意し、直列に接続する(図7(b))。それぞれの電球の消費電力はいくらか。また合わせていくらか。


(a) 同じ電球の直列接続

(b) 異なる電球の直列接続

(c) (b)を書き換えた図

(d) 破線左側

(e) 破線右側
図7 豆電球の直列接続

(練習) 図2を参考にして図7(b)を(c)のように書き換え、図の破線箇所の電圧Eと電流Iに着目する。
(1) 破線左側(d)について、E と I の関係をグラフに描きなさい。
(2) 破線右側(e)について、E と I の関係をグラフに描きなさい。
(3) (1)と(2)の交点(動作点)の E と I をグラフから読み取りなさい。

2.4 特性が与えられた2つの電球の直列接続

 電球のフィラメントは温度が高くなると抵抗値が大きくなります。

 図7で、2つの電球の電圧電流特性が図8(a)の f1( ), f2( ) のようであったとします。

 図7(d)で破線右側に何を接続しようとも、 E と I は I=f1(1.5-E) の線上にあります(図8(b)の右下がりの線)。また、図7(e)で破線左側に何を接続しようとも、E と I は I=f2(E) の線上にあります(図8(b)の右上がりの線)。両者を満たす点として、2つの線の交点(動作点)を読み取ると、およそ E=0.3V, I=0.27A です。電球1に加わる電圧は 1.2V、電球2に加わる電圧は 0.3V で、消費電力は

P1=1.2 ×0.27 = 0.32 [W]
P2=0.3 ×0.27 = 0.08 [W]
となります。


(a) 2つの電球の電圧電流特性

(b) 破線箇所の電圧と電流はそれぞれの線上にある
図8 特性が与えられた2つの電球を直列接続した時の電圧と電流の求め方

(練習) 図9(a) のように、40W の電球1と 100W の電球2を直列接続してACコンセント(100V)につないだ。以下の各々の場合について、各電球に加わる電圧、流れる電流、消費電力を求めなさい。
(1) 電球を単純な抵抗と考えた場合
(2) 電球の特性が図9(b)のようであった場合
(3) 40Wの電球1の代わりに250Ωの抵抗を接続した場合


(a) 電球の直列接続

(b) 電球の電圧電流特性
図9 電球の直列接続

2.5 電球の並列接続(電池の内部抵抗を考慮した場合)

 2.2 でみたように、電球を2個並列接続すれば2倍の明るさ(消費電力)に、同様に10個並列接続すれば10倍の明るさ(消費電力)になります。このように、電池からいくらでも電力を取り出せそうに思えますが、これは電池が理想電圧源(内部抵抗0)の場合であって、実際には図1(c)のように内部抵抗を考える必要があります。「電球を並列接続すると暗くなる」ことも起きるのです(もちろん明るくなることもあります)。

 この問題は 4 で考えることにします。

2.6 電池の並列接続

 電池を並列接続することにより、電池の内部抵抗を見掛け上少なくすることができます。「2.5 電球の並列接続」や「4. スチロールカッター」のように、電池からたくさんの電力を取り出したい場合は、電池の並列接続は有効な方法です。

(練習) 下図(a)のように電池を並列接続した場合の等価回路(b)をテブナンの定理を用いて示しなさい。


(a) 電池の並列接続

(b) 等価回路

3. LEDの点灯

 赤色LEDを電池に接続して点灯させたいとします。まず、図10(a)のように電池(1.5V)に接続してみますが、点灯しません。電圧が足りないのかもしれないと思い、図10(b)のように電池を2本直列(3V)にすると、一瞬明るく点灯しますが、すぐに消えてしまいました。LEDが破損したようです。


(a) 赤色LEDに電池(1.5V)を接続

(b) 赤色LEDに電池(3V)を接続

(c) 抵抗を挿入した接続
図10 赤色LEDの接続

 これはどう考えたらいいのでしょうか。

 赤色LEDのカタログ(仕様)を見ると、

のような記載があります。これは、それぞれ ということを表しています。

 赤色LEDは概ね図11(a)のような電圧電流特性になっています。2Vぐらいまではほとんど電流が流れずに、2V近辺から電圧を上げると急激に電流が増加するという特徴を持っています。この特性を念頭に、先程の電池とLEDの接続について考えてみましょう。このグラフを見ると、LED両端の電圧が1.5V(図10(a))では、ほとんど電流が流れません。つまり、LEDは点灯しないのです。

 一方、LED両端の電圧が3V(図10(b))の時は、このグラフの範囲外になりますが、LEDの最大定格である30mAを超える大きな電流が流れてしまうことがわかります。LEDを破損してしまうのです。

 ではどうしたらいいでしょうか。図10(c)のように直列に抵抗を挿入するというのがその答えです。今、その抵抗の値が200Ωであったとします。1章の時と同様に考えると、 E と I は

という2つの条件を満たさなければならないので、2つのグラフの交点(動作点)がその解となります。図から E=1.9V, I=5.5mA と読み取れます。


(a) 赤色LEDの電圧電流特性

(b) 抵抗(200Ω)を挿入した場合の電流の求め方
図11 赤色LEDに流れる電流

(抵抗値の決め方)
 LEDに直列に接続する抵抗の値はどのように決めればいいでしょうか。まず、LEDのデータシートで順方向電流 IF の最大定格と、順方向電圧 VF を調べます。 IFmax=30mA, VF=2.1V であったとします。ここで、流したい電流を決めます。最大定格の範囲内で、例えば IF=5mA に決めます。5mA の電流を流した時の電圧が VF=2.1Vであると考えます(大きく違いません)。電源の電圧が 3V であれば、抵抗に加わる電圧は 3-2.1=0.9V となります。0.9V 加わった時に 5mA の電流が流れるようにするには、

R=0.9/0.005=180 [Ω]
にすれば良いことになります。通常は、電流を厳密に決めなければならない事情はないので、このような方法で抵抗値を決めます。

(練習) DC5V の電源に青色LEDをつなぎたい。電流を概ね5mAとするには、直列に入れる抵抗の値はいくらにしたら良いか。ただし、順方向電圧 VF=3.2V とする。

4. スチロールカッター

 いずれも0.28mmφの、銅線とステンレス線とニクロム線があったとします。これらを10cmの長さに切って乾電池につなぎ、スチロールカッターを作ることを考えます(図12(a))。


(a) 基本回路

(b) 電池の内部抵抗を考慮
図12 スチロールカッター

 これらの金属の電気抵抗率から0.28mmφ10cmの電線の抵抗値を求めたのが表1です。

表1 電気抵抗率と電線(0.28mmφ10cm)の抵抗値
 電気抵抗率[Ωm]電線の抵抗値[Ω]
1.68×10-80.0273
ステンレス7.2×10-71.17
ニクロム1.5×10-62.44

 これらの電線を1.5Vの乾電池につないだ場合の、電流と消費電力を計算すると表2のようになります。

表2 それぞれの線に流れる電流と消費電力
 電線の抵抗値[Ω]電流[A]消費電力[W]
0.02735582.5
ステンレス1.171.281.92
ニクロム2.440.6160.92

 この結果を見ると、銅線が一番熱くなり、カッターとして十分利用できると思われるのですが、実際にやってみると、銅線よりも電池が熱くなってしまいます。

 これは、電池は理想的な直流電圧源ではなく、図12(b)のように内部抵抗があるためです。内部抵抗を 0.3Ω であるとして、これを考慮してそれぞれの電線に流れる電流、両端の電圧、消費電力を計算したのが表3です。

表3 電線に流れる電流と電圧と消費電力
(電池の内部抵抗が0.3Ωの場合)
 電線の抵抗値[Ω]電流[A]電圧[V]消費電力[W]
0.02734.580.1280.573
ステンレス1.171.021.191.28
ニクロム2.440.5481.340.73

 意外にも、抵抗値が中間のステンレスが最も消費電力が大きいという結果です。

 図13は、電池の電圧と内部抵抗で決まる負荷線と、銅、ステンレス、ニクロムの各線の抵抗値で決まる電圧電流特性をグラフにしたものです。その交点(動作点)がそれぞれの線を接続した時の電圧と電流になっています。


図13 電池の負荷線と各金属線の電圧電流特性

図14 Rを変えた時の消費電力P

 では、この電池からはいったい外部に最大どれだけの電力を取り出せるでしょうか。また、それは何Ωの抵抗をつないだ時でしょうか。

 図12(b)でRに流れる電流は

I = 1.5 / (0.3+R)
R 両端の電圧は
E = I × R = 1.5 × R / (0.3+R)
R の消費電力は
P = E × I = 1.52 × R / (0.3+R)2
となります。図13では、原点と動作点を結ぶ線を対角線とする長方形の面積が消費電力を表すことになります。

 接続する抵抗の値 R を変えた時に消費電力 P がどのように変化するかを示したのが図14です。

 P が最大となる R は、

dP/dR = 0
より R=0.3Ω の時であことがわかります。その時の消費電力は P=1.875W で、これがこの電池から取り出せる最大の電力です。スチロールカッターのように、電池からなるべく多くの電力を引き出したい場合は、以上のことを考慮して電線の材質や太さを吟味する必要があります。

(練習) 表1の電気抵抗率から、同表にある電線(0.28mmφ10cm)の抵抗値を、表計算ソフトを用いて計算しなさい。

(練習) 2.6のように、内部抵抗が0.3Ωの電池を2個並列につなぐと、見掛け上 1.5V 0.15Ω の電池となる。この場合、表3がどうなるかを表計算ソフトを用いて計算しなさい。また、図13に相当するグラフを描きなさい。

(練習) 内部抵抗が0.3Ωの電池を2個直列につなぐと、見掛け上 3V 0.6Ω の電池となる。この場合、表3がどうなるかを表計算ソフトを用いて計算しなさい。また、図13に相当するグラフを描きなさい。

(練習) 下図のように電池に電球をたくさん接続し、全体の明るさをなるべく明るくしたい(電球の消費電力を最大にしたい)。
(1) 電球を何個接続すればいいか。また、その時の電球の消費電力はいくらか。
(2) 電池を2個並列に接続した場合は、それぞれどうなるか。

5. コンセントの発火事故

 コンセントの発火事故がニュースになることがあります。

 今、ACコンセント(100V)に 2kW の電気ストーブをつないでいるとします。電気ストーブの抵抗値は

P=1002/R = 2000
より R=5Ω です。基本的な回路は図15(a)のようになります。


(a) 基本回路

(b) コンセントの接触抵抗を考慮
図15 電気ストーブ

 コンセントは抜き差し可能な作りになっているため、接触面積が十分広く確保されているとわけではありません(図16(a))。ここで、接触部分を図16(b)のように模式的に考えてみます。0.02mmφの銅線 1mm の抵抗値を計算すると 0.0535Ω となります。ケーブルなど他の抵抗を考えずに、また接触抵抗も1箇所のみ考えることにすると、図15(b)のように考えることができます。この時、回路に流れる電流は

100 / (0.0535 + 5) = 19.8 [A]
接触部分に加わる電圧は
19.8 × 0.0535 = 1.06 [V]
接触箇所の電力は
1.06 × 19.8 = 21.0 [W]
となり、この箇所はかなり発熱すると見込まれます。ここに可燃性のホコリなどがつくと、発火に結び付く可能性があります。コンセントが緩い場合などは接触抵抗が大きくなり、発熱も大きいと考えられます。


(a) 接触の様子

(b) 接触部のモデル
図16 コンセント

6. トランジスタ回路

6.1 小信号電圧増幅回路

 最後は、トランジスタ回路について考えてみます。

 まずは、マイクロホンなどの小信号を電圧増幅する回路です。

 図17(a)はベース回路です。ベース・エミッタ間の電圧電流特性は、VF=0.7V のダイオードの特性となり、図18(a)のようであったとします。今、ベース電流を IB=10μA にしたいとすると、LED(2章)の「抵抗値の決め方」と同様の方法で

RB = (3-0.7) / IB = 2.3 / 0.00001 = 230kΩ
となります。図17(a)には I=(3-E)/230000 の負荷線も表示されているのですが、I が小さいため、見にくくなっています。

 ここで、図17(b)のように交流小信号を加えると、 IB を 10μA を中心に微小変化させることができます。ここでは、マイクから 2mV の微小信号を加えた時にベース電流が 2μA 変化したとします。

 次にコレクタ回路(図17(c))について考えます。 図18(c)でIC, VCEは IC=(3-VCE)/1000 の負荷線上にあります。また、コレクタ・エミッタ間の電圧電流特性は、IBによって変化し、 IB=10μA であったとすると、該当する線上にあります。これらの交点(動作点)を読み取ると、 VCE=1V, IC=2mA となります。

 IB=9~11μA と変化すると、それぞれ図18(c)のように電圧電流特性は概ね上下に並行移動するように変化し、これにあわせて動作点も変化します。グラフから電圧の変化分はおよそ 0.3V と読み取れます。


(a) ベース回路

(b) 交流小信号を加える

(c) コレクタ回路

(d) 小信号増幅回路
図17 トランジスタ回路

 図17の(b)と(c)を合わせて描いた回路図が(d)で、これまでのことをまとめると次のようになります。

  1. マイクの信号を加え ベース・エミッタ間の電圧 VBEを微小変化させる(2mV 変化)。
  2. ベース電流 IB が 10μA を中心に 2μA 変化する。
  3. コレクタ・エミッタ間の電圧電流特性が変化する。
  4. 動作点が変化する。
  5. VCEの変化量は0.3Vで、入力した VBE の変化分 2mV の150倍となっている。
このように小信号の電圧増幅が行われるのです。

 なお、小信号の入力電圧がプラス方向に変化するとベース電流 IB は増加し、コレクタの電圧電流の特性は上方向に並行移動するような感じで変化し、動作点は左上に移動し、VCEはマイナス方向に変化します。このように、入出力の信号波形は反転することになります。


(a) ベース回路の電圧電流特性

(b) コレクタ回路の電圧電流特性
図18 トランジスタ回路の電圧電流特性

※ 本章は、トランジスタの特性を具体的に仮定しています。もしも実際に実験で確かめようとする場合は、トランジスタの固体差が大きいので、VCEが1V程度になるようにRBを選ぶと良いでしょう。例えば手元にあった2SC945では、RB=820kΩ が適当でした。実際の増幅回路では、トランジスタの固体差が問題にならないように工夫されています。

6.2 デジタル回路(NOT回路)

 デジタル回路では、「1」を高い電圧、「0」を低い電圧に対応させて扱います。NOT回路は図19(a)のようなトランジスタ回路で実現できます。前節の小信号増幅回路と比べると、RB が5kΩと小さくなっています。これにより、図20(a)の負荷線は図18(a)と比べ急勾配になり、Vin が高い場合(例えば3V)は十分大きなベース電流(図では約0.24mA)が流れます。


(a) NOT素子の回路例

(b) 入出力特性
図19 NOT素子の回路例と入出力特性

 Vin を変化させた場合、例えば2Vにすると図中矢印のように負荷線が移動し、これに伴いベース電流が変化します(図では約0.14mA)。Vin を小さくしていくと、0.7V 近辺からベース電流は急激に小さくなり、0.5Vから下ではほとんど0になります。ベース電流の値が決まると、コレクタ・エミッタ間の電圧電流特性は図20(b)のように変化します。図には IB=0 と IB=30μA のグラフしか描いていませんが、例えば IB=0.24mA, 0.14mA の時などは、IB=30μA のグラフをずっと上に並行移動したような特性になります。といっても、この図を見ると IB=20μA 以上での負荷線との交点(動作点)は VCE≒0 です。

 このようなことを考慮し、 Vin と Vout (VCE) の関係をグラフにすると、図19(b)のようになります。 Vin が低い電圧(例えば 0.6V 以下)の時は Vout(VCE) は高い電圧(約3V)になり、 Vin が高い電圧(例えば 2V 以上)の時は Vout(VCE) は低い電圧(ほぼ0V)になります。この回路をNOT素子として利用する場合は入出力特性のこのような特徴を利用しています。

 一方、この回路を小信号増幅回路として見た場合は、図19(b)で Vin を 0.9V 付近で微小変動させると、Vout は 1.5V 付近で大きく変動することがわかります。


(a) ベース・エミッタ間の電圧電流特性

(b) コレクタ・エミッタ間の電圧電流特性
図20 NOT回路の動作

(練習) 下図に示すAND素子およびOR素子の回路例について、負荷線で動作を検討しなさい。


(a) AND素子の回路例

(b) OR素子の回路例

koyama@hirosaki-u.ac.jp