弘前大学大学院教育学研究科教科 院生 笹森賢司
2002年9月3日
はじまり
マイクロコンピュータ内蔵ザリガニロボット製作のはじまりは、一昨年であった。たまたま、本学教育実践研究センターの小山先生を訪ねたところから話が始まった。
当時、弘前大学附属中学校で共に技術科を担当する濱邊教官がザリガニロボットを授業に取り入れる企画を練っていて、何基かの試作ザリガニを製作しており、私もつられて2基ほど製作した。そんなおりに、小山研究室を訪ねたところ、小山先生はPICマイコンで様々なものを作っていた。その製作品を見たり、お話を聞いたりしている内に、PICマイコンをザリガニロボットに組み込めないかということになった。
夏休み数日、小山研究室に通い、何とかPICマイコンを組み込んだザリガニロボットが起動した。


PICをザリガニに組み込むにあたってもおくつかのハードルがあった。生徒に制作させるザリガニロボットとできるだけ同じものに、PICを組み込みたいと考えたので、材料は厚紙工作紙で、断面は1辺20ミリとした。ここで、基盤の小型化が必要になった。PICは6Vで動作するので、ふつうの乾電池であれば、4個は必要である。さらにモーター駆動する際に電圧降下を伴うので、6V電源ではPICの動作が不安定になってしまう。PICを利用した工作紹介などでは、PIC用と駆動モーターを別電源としている。しかし、それでは小さなザリガニに組み込むことは叶わない。そこで9Vの集合乾電池を利用し、PICには三端子レギュレーターで6Vを安定供給し、同時にモーターには9Vを供給することにした。マブチモーターに9Vは過大であるが、制御用のチップであるTA7257P(TOSHIBA)で相当電圧降下するので、概ね丁度よい電圧がモーターに供給されることになる。ただ、実際に駆動させようとするとうんともすんとも言わない。未だ原因は解っていない(たぶん電池の内部抵抗か出力時の電圧降下が原因)。マンガン電池からアルカリ電池に変更したところ、良好に走行した。
ただ、問題はザリガニがかなり激しく走り回り、またモーターのみの有線リモコンマシンに比べて自重が相当重いため、壁などに衝突する際にボディの損傷が激しく、また衝撃でモーター自体もはずれるというトラブルが多かった。上右図は、相当走行実験を繰り返したものだけに、画像からも相当くたびれていることがお解りになるだろう。
遠大な計画
その後、現職研修で弘前大学大学院教育学研究科に進学し、情報技術演習で再び小山研究室へ出入りすることとなった。
小山先生は、PICより性能の良いAVRというワンチップマイコンを紹介してくれた。そこで希望だけが大きく膨らんだ。
当初、赤外線発光ダイオードを組み込んだボールへ向かって突っ込んでいくザリガニを作りたいと考えた。また、複数のザリガニが発光ダイオードと光センサーとで信号を送受信しながら動作するというものも考えた。今振り返れば、実に遠大な計画だった。
現実の壁
大学院生は予想したより忙しく、そうそう小山研究室へ入り浸って研究することは叶わなかった。そもそも配布されたATMEL社AVRマイコンのマニュアルは全て英文であった。それ以上に、私自身がマイコンについて全くの素人で、ああしようこうしようということが頭にあっても、どうすれば良いという方策を見いだすに至らなかった。
結局、遠大な計画は夢となり、単にプログラムされた手順にしたがって順次走行するザリガニロボットの製作で終わってしまった。



ただ、今回は前回の問題点を改善しようと、ボディ自体を工作用紙ではなく、プラバン(タミヤ製0.1ミリ厚)を利用し、モーター接合部にも若干の工夫をし、ショックを吸収するようにした。また、前回、走行中に制御用のチップが異常に加熱したことを踏まえ、モーター部に5Ωの抵抗を咬ませて、負担を軽減することにした。
懲りずに発展的課題を思う
このザリガニを教材として利用することについて、懲りずに課題を探るなら、携帯電話の着メロ作成メニューからの音声信号でプログラムの書き換えができるようにすることである。
生徒にプログラムさせることは容易ではない。AVRへの書き込みは通常C言語で行う。これは中学校の授業ではほぼ無理に近い。ギジュツドットコムで紹介されフリーで配布されている「オートマ君」のようなアッセンブラソフトができれば、授業でプログラムさせることも可能であり、授業として一定の意義も見いだせる。
しかし、生徒が自宅に持って帰った後で、パソコンなしでもプログラムの書き換えができるなら、もっと面白そうである。テレビのリモコンなども考えたが、テレビのリモコンには残念ながらメモリーがない。そこで、携帯電話の着メロを作成するメニューを利用できないかと考えた。幸い、私の持つ携帯電話(CASHIO C409CA)を調べたところ、3矩形波という音源は極めてサインカーブに近い波形の音を発信する。
例えば、携帯電話からド2の音を発信すれば、前進、ミ2で左折、ソ2で右折、ド3で後退、ミ3で後退左折、ソ3で後退右折、ド4で右旋回、ミ4で左旋回というように学習機能を設定しておけば、携帯電話から発信される音で走行の状態をプログラムすることができる。携帯から発信される音の倍速でプログラムするのが良いか、3倍速、5倍速が良いか、あるいは雑音対策をどうするか、等々課題は山積しているけれど、携帯の音符でプログラムというのも面 白いと思われる。
中学校の技術の授業で「情報とコンピュータ」を扱う場合、ついついコンピュータ室等にこもってしまう傾向があるという声もある。ややもすると生徒にコンピュータ=パソコンという固定的概念を与えてしまうかも知れない。確かにパソコンは身近な存在となっている。また、パソコンを利用するという行為は、コンピュータを操作するという実感を強く与えるかも知れない。しかし、ある視点からみれば、我々の生活を便利で豊かなものにしているコンピュータはパソコン以上にワンチップのマイコンであるともいえる。今や炊飯器から冷蔵庫、エアコンなど様々な家電、自動車などにマイコンが組み込まれている。そういう意味では、マイコンを体験的に利用し、その機能や性質の概念を形成するための授業も必要ではないかと思われる。