
会に参加される方に上記のイメージを押し付けるつもりは毛頭ありません。さまざまな方が寄り集まって互いに刺激を与えて、それが各々の活力になればそれでよいわけですから。会を始めた当初から参加されている高橋信進さんが、このことをうまく表現しているので以下に紹介させていただきます。
さて、上図の「創造」をもう少し具体的に書いてみたものが下図です。
「incubatorの話のコピーを同封しました。かつて共に勤務した職場や先生と語れる機会を持っていることが、私にとって貴重なインキュベイターであると思っています。公式・非公式にでも、是非声を掛けてください」。先日、友人のA君からこのような手紙をいただいた。その中には、野口悠紀雄著「超整理法」から抜粋したコピーが同封されてい た。
野口氏は、発想法もしくはアイディア製造法というものはありうるのか、もしあるとすれば、それは"発想を支援するための環境を整えること"なのではないか、と論じていた。発想を促す1つの方法は、知的な人々を自分の周りに持つことだという。双務的に影響し合える集団に属することができるならば、それが理想的なインキュベイター(孵卵器)となってその人を育ててくれる、と述べていた。
「お互い双務的になりたいものですね」、手紙はこのように結ばれていた。弘前大学教育学部教育実践研究指導センターでは「教育・福祉とエレクトロニクス懇話会」を開催している。この会は、小山智史助教授を中心に養護学校・療護施設・民間会社等の人達が月1回集まり、身体に障害を持つ人達のためのコンピュータ利用技術について、それぞれの立場から情報を提供し合い意見交換を行う会である。
私も時々参加させていただいているが、一方的に情報を与えてもらうだけで申し訳なく思いながらも、コンピュータをより一層人間の側に近づける分野の研究として、いつも刺激と感動を与えていただいている。私にとって、この懇話会は貴重なインキュベイターになっている。(後略)(高橋信進「インキュベイターとしてのセンター」 青森県情報処理教育センター センターだより 第41号 1994年 より抜粋)

コンピュータは、CPU(中央処理装置), ALU(演算装置), メモリ(記憶装置), I/O(入出力装置)で構成されます。「ワンチップマイコン」はこれらの全機能を1個のLSIにまとめたものです。現在では、TV、電子炊飯器、体温計、携帯電話など身近な家電製品(民生機器)の多くにワンチップマイコンが組み込まれています。量産品では、部品点数を少なくしてコストを下げることが求められるため、自ずと「ワンチップ」の出番となります。この場合、プログラムはマイコン製造時に書き込まれます。マイコンメーカーは量産品向けのワンチップマイコンの開発に力を注ぎ、プログラム可能なマイコンは量産品向けのプログラム開発用という意味合いが強かったと言えます。一方、付加価値の高い産業機器に組み込むマイコンは「ワンチップ」である必要はなありませんでした。
1995年ころから普及したPIC[2][5]やAVR[3][6]というワンチップマイコンは、容易にプログラムの書き換えができるため多品種少量生産の用途に適しており、「静かなブーム」になっています。「試作は可能であっても実用化が困難であった(小物)機器」や「個別に対応が必要な福祉機器」の製作が容易になりました。
| (年) | (出来事) |
|---|---|
| 1946 | 電子計算機ENIAC(米ペンシルバニア大:J.Mauchly, J.P.Eckert)...結線によるプログラムで, 真空管18800本 |
| 1947 | プログラム内蔵方式の構想(米J.V.Neumann) |
| 1949 | プログラム内蔵型計算機 EDSAC(英ケンブリッジ大:M.V.Wilkes)...命令とデータで512個のメモリ |
| 1951 | 初の商用コンピュータ UNIVAC1 |
| 1957 | FORTRAN言語(米バッカス) |
| 1964 | IC使用コンピュータ 360(IBM) |
| 1971 | 4bit マイコン i4004(米インテル:ファジン, ビジコン:嶋正利) |
| 1974 | 8bit マイコン i8080(米インテル:ファジン,嶋正利) |
| 1975 | BASIC言語(米ゲイツ) |
| 1976 | 8bit ワンチップマイコン i8048(米インテル) |
| 1976 | ワンボードマイコン TK-80 88500円(NEC) |
| 1976 | 8bit OS CP/M(米Digitalresearch) |
| 1977 | 8bit PC APPLE II(米Apple), PET(米COMODOR), TRS-80(米Tandy) |
| 1978 | 16bit マイコン i8086(米インテル) |
| 1979 | 8bit PC8001 168000円(NEC) |
| 1981 | 16bit PC(米IBM) |
| 1981 | 16bit OS MS-DOS(米Microsort) |
| 1982 | 16bit PC9801(NEC) |
| 1985 | Macintosh(米APPLE) |
| 1989 | ワンチップマイコン PIC(米Microchip) |
| 1992 | Windows3.1(米Microsoft) |
| 1997 | ワンチップマイコン AVR(米ATMEL) |
| PIC16F84A | AVR2313 | 8048(参考) | |
|---|---|---|---|
| ピン数 | 18 | 20 | 40 |
| 命令数 | 35 | 118 | 96 |
| クロック(命令サイクル) | 20MHz(0.2μs) | 10MHz(0.1μs) | 6MHz(2.5μs) |
| 入出力数 | 13 | 15 | 27 |
| タイマー | 1 | 2 | 1 |
| 汎用レジスタ | 1個 | 32個 | 2個 |
| プログラムメモリ(ROM) | 1Kワード | 1Kワード | 1Kバイト |
| データメモリ(RAM) | 68バイト | 128バイト | 64バイト |
| 不揮発データメモリ(EEPROM) | 64バイト | 128バイト | なし |
| 消費電力(参考) | 10mW | 8.4mW | 300mW |
| 参考価格 | 350円 | 350円 | 1200円 |

岩木病院や山郷館には、側に置いてある自分のテレビのリモコン操作ができない重度障害者が何人もいます。リモコンを手で持っていても、リモコンのボタンを押す力が無く、あるいは複数のボタンを押し分けることができずに、そのたったひとつの操作をも誰かに依頼しなくてはなりません。あるいは頻繁に依頼することを恐縮して我慢することもあるようです。
「なんでもリモコン」はこのような問題を解決するために作った汎用リモコン装置で、岩木病院と山郷館で現在6台利用されています。
概ね次のようなものです。なお操作方法や技術的な情報は、「なんでもリモコンのページ」をご覧ください。


次世代に向けて、高齢者や障害者にも馴染むようなコミュニケーションスタイルの研究は重要なテーマであると思われます。「高齢者にアンケート...」というようなアプローチもあるわけですが、これは今存在しないものを模索する時に必ずしも適当な方法ではありません。柔軟な発想が何より重要で、そのためには、さまざまな方の考えが交錯するこの懇話会は大変貴重な場であると思っています。
ワンチップマイコンとの関連で言えば、次のような製品や研究が注目されます。
(参考資料)
[1]嶋正利: マイクロプロセッサの25年, 電子情報通信学会誌, Vol.82, No.10, pp.997-1017, 1999.
[2]後閑哲也: PIC活用ガイドブック, 技術評論社, 2000.
[3]赤松武史: AVRマイコンの概要と専用ライタの製作, トランジスタ技術, 1999年11月号, pp269-280.
[4]石井裕: Tangible Bits: 情報の感触/情報の気配, 情報処理, Vol.39, No.8, pp.745-751, 1998.
[5]MicroChip社(PICマイコン), http://www.microchip.com
[6]ATMEL社(AVRマイコン), http://www.atmel.com/atmel/products/prod23.htm
[7]赤松武史: AVRライタ制作集, http://elm-chan.org/works/avrx/report.html
[8]桜井: マウス改造用クリックコントロールチップ, http://member.nifty.ne.jp/RadioShack/techv/pdev/ccc/ccc.html
[9]TriState corp.マウスクリックコントロールチップ, http://www.tristate.ne.jp/tsjob010.htm
[10]桜井: リモコンプロジェクト
[11]クロッサム2+(ハル・コーポレーション), http://www.halcorp.co.jp/hard/crossam/index.htm
[12]福士幸弘: クロッサムコントローラ, http://member.nifty.ne.jp/kikiroom/remocon/cro-con.htm
[13]PADdeMOUSE
[14]なんでもリモコン, http://siva.cc.hirosaki-u.ac.jp/usr/koyama/product/irscan.htm
