手足を動かせず話すこともできない重度肢体障害者にとって、家族や介護の人などとコミュニケーションができるかどうかは、極めて切実な問題である。円滑なコミュニケーションはその人のQOL(生活の質)を向上させるばかりでなく、場合によっては、その人の生きる意欲までも左右することもある。この意味で、身体の一部を利用して操作する意志伝達装置は重い役割を持つ。特に、ベットの上で日常生活を送る重度障害者にとって、意志伝達装置でインターネットを利用できれば、その人の世界は広がり、新たな生きがいを生み出すことも期待できるのである。
国立療養所岩木病院で入院生活を送っている筋ジストロフィー患者、F兄弟は互いに隣接する病棟(距離約60メートルほど)に入院している。F兄弟は余暇時間にインターネットを用いて、兄弟間または家族間でコミュニケーションをはかることを希望している。
この筋ジストロフィー患者の事例をもとに、患者の特徴や機能障害と、操作性の関係を十分に考慮し、より扱いやすいパソコン環境を提供するためにどのような配慮が必要なのか、最も適した装置の検討をした。
まず、筋ジストロフィーについての知識を深め、「伝の心」とNetMeetingの連携、そして、プレゼンテーションソフトとして知られるPowerPointを利用して、スイッチ1個で操作できる支援ツールの作成に挑戦した。実用にはいたらなかったが、この研究を進めていく中で、たくさんの課題や可能性に気づかされた。システムの開発に取り組む研究者間の情報交換がもっと活発になれば、よりいっそう福祉機器の向上につながるのではないかと思った。
