研究集会趣旨


微分位相幾何学の基本テーマは, 多様体やその間の写像の幾何的な特徴を捉える事と言える. それらは特異点に情報が集約されている事が多いため, 特異点の解析が重要となる. 本研究集会の目的は, 上述の通り,特異点を用いて多様体, 写像の幾何的特徴を捕まえるという講演を主とし, 参加者による活発な議論と交流を通して, 特異点論及び幾何学の研究の進展に寄与することにある. この様な集会が必要である理由は以下の通りである.

Morse理論に代表される様に, 多様体のトポロジーを調べるのに特異点は本質的役割を果たす. 同時に, 特異点の近傍での振る舞いからMorse関数自体の構造も把握できる. しかし, 多様体全体や写像全体はそれこそ"多様"であるため, 個々の多様体,写像に着目してもこれらの特徴を見通す事は困難である. そこで,多様体全体, 写像全体に幾何学的な構造を与えて分類するという視点が重要になる.

多様体の分類は, Pontrjagin, Thom, Rohlinによるcobordism理論が挙げられる. ここで本質的役割を果たすのは, Thom空間である. Thom空間は多様体をユークリッド空間に埋め込む事により自然に現れる. そのため埋め込み写像といった"ある種の"写像をcobordantという同値関係により分類するという問題に一般化出来る. はめ込み写像の分類がWellsによってなされた後, 特異点を許容する写像のcobordism理論が近年発展しつつある.

cobordism理論で最も重要な事は, cobordism類は可換群で, Thom空間のホモトピー群と同型であるという定理である. この様に, 幾何学的な視点からの分類問題を代数的な言葉で解釈するという行為はトポロジーや幾何学の常套手段である. その解釈の過程において特異点がどの様に関わり, どの様な役割を果たしているかを知る事が重要になる. 以上の理由から冒頭に述べた趣旨による集会を企画するに至った.

本研究集会において, 具体的には以下のテーマを取り上げたい.

上記のテーマは, 代数トポロジー,結び目理論,3・4次元のトポロジー, 代数幾何学,微分幾何学等, 多くの幾何学的視点からの問題を特異点というキーワードで結びつける事を狙いとしている. そのため, この研究集会開催は,特異点論分野の発展のみならず, 多くの関連分野とともに発展してゆく上で有益なものになることも付け加えておきたい.




幾何学的視点からの特異点論